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松村太郎「米国発ビジネス&ITレポート」

インスタが、新たな動画アプリを「あえて」別アプリとしてリリースした巧妙な戦略

文=松村太郎/ITジャーナリスト
インスタが、新たな動画アプリを「あえて」別アプリとしてリリースした巧妙な戦略の画像1「IGTV」起動画面より

 Instagramは米国時間6月20日、月間アクティブユーザー数が10億人を突破したことを発表した。Facebook本体のアプリは20億人を超えているが、より機能がシンプルな写真と動画の共有アプリが、多機能なFacebookの半分ものアクティブユーザーを獲得している点で、Instagramのモバイル時代をとらえた展開が成功していることを象徴している。

 同時に、Instagramは「IGTV」という新しいアプリを発表した。このアプリは、Instagramプラットホームにおいて1分以上の長いビデオを流通させる仕組みだ。Instagramとは別のアプリとして提供されるが、アカウントやユーザー間のフォローの関係はInstagram本体のものと共通。IGTVは動画の視聴が主体験となるが、チャンネルを開設することで、通常のユーザーは10分、一部のクリエイターには最大1時間のビデオを投稿することができるようになる。

 投稿されたビデオは、IGTVだけでなくInstagram本体のアプリでも表示できる。ただし、Instagramのような動画編集機能は用意されておらず、あくまでライブで動画を撮影するか、別のアプリやパソコンなどで編集されたビデオを投稿することが前提となっている。

現状は広告なしだが

 IGTVは現状、広告が入らない。しかしInstagramは今後、クリエイターが収益を得る手段を提供することを明かしている。クリエイターが収益を得るプラットホームとしては、YouTubeが主だ。チャンネル登録者数が1000人を超えると広告による収益を上げることができるようになり、再生時間と回数で収入が得られる。InstagramがIGTVでYouTubeと同様のモデルを構築するかどうかは不明だが、まったく異なる方法を考えるかもしれない。

 一つは広告主とクリエイターにマッチングの場を用意するモデルだ。すでに認知されているInstagramのインフルエンサーを起用したい企業やブランドとの間で、IGTVを通じて取引を行い、Instagramはその手数料を得るという仕組みだ。あるいは、ユーザーが直接、クリエイターに対してお金を支払うモデルを用意することも考えられる。いずれにしても、後発のプラットホームであるため、YouTubeと同じことをしても成功しにくい。新しい文化をつくるような取り組みを試しながら、新しい動画の場としての存在感を醸成していくことになるだろう。

松村太郎/ITジャーナリスト

松村太郎/ITジャーナリスト

慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、ジャーナリストとして独立。テクノロジーとライフスタイルの関係を追いかける。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、テクノロジーの震源地であるサンフランシスコ・シリコンバレーを現地で取材した。
学校法人信学会 コードアカデミー高等学校

Twitter:@taromatsumura

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