20代の2人に1人がフェイスブック、4人に1人がインスタグラムを利用するなど、今や生活と切っても切れない存在となっているソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。近年は若者だけでなく、40~50代のSNS利用者も急増している。
一方で、普及に伴いSNSに翻弄される人々も増えている。なかでも問題となっているのが「SNSうつ」だ。専門家は、「SNSの利用によって不安感や自信の喪失、うつ状態を訴える人が年々増えている」と警鐘を鳴らす。
SNSの依存性はアルコールやギャンブルに並ぶ
ゆうメンタルクリニックの医師・森しほ氏は、「SNSというのは、利用すれば利用するほど『主観的幸福感』を低下させます」と指摘する。
「『主観的幸福感』とは、『周囲と比較して、自分がどれだけ満たされているか』と感じること。SNSで他人の情報に触れる機会が多いと、この主観的幸福感を低下させることがわかっています。また、人間の気持ちや意欲を司る大脳辺縁系は文字情報よりも画像に反応しやすい。そのため、インスタグラムやフェイスブックは、ネガティブな感情をより増幅させやすいのです」(森氏)
うつ状態と大きく関係しているのが、SNSが持つ強い依存性だ。
「人間の脳は、依存対象に触れると、快感や多幸感が得られる神経伝達物質のドーパミンが分泌されて一時的に安定するので、不安になればなるほど依存対象を求めようとします。そのため、『インスタグラムやフェイスブックを見ると不安になる』とわかっていても、どうしてもアクセスせずにはいられなくなってしまうのです」(同)
頭では「ダメだ」とわかっているのに、どうしてもやめられない。この強い依存性は、アルコールやギャンブルにも匹敵するという。しかも、イギリス王立公衆衛生協会が発表したレポート「Young Health Movement(若者の健康に関する動向)」は、「SNSが持つ依存性はアルコールやニコチンよりも高い」と指摘している。
「SNSは、依存のハードルが極端に低いのです。アルコールやタバコと違い、SNSは社会的に受け入れられているので、周囲からの抑止力も強くありません。そのため、一度依存してしまうと抜け出すのは容易ではなく、また、スマホでアクセスできる気軽さもあって、うつを再発しやすい特徴があります」(同)
SNSへの依存は、うつ状態のほかに睡眠障害や自律神経失調症などにもつながる。クリニックでは、こうした患者へのカウンセリング治療を行っているが、森氏によると、治療せずに放置することで入院するまで悪化した事例もあるという。
40代以上のSNS利用は自滅行為?
さらに恐ろしいのは、この「SNSうつ」は、近年増えている40~50代の利用者も無関係ではないというところだ。
「SNSによる主観的幸福感の低下に、年齢は関係ありません。むしろ、働き盛りの世代は若者に比べて出世や転職、子どもの成長など、キャリアや私生活でさまざまなライフイベントが訪れます。その分、SNSを通じた主観的幸福感が刺激されやすい世代といえるでしょう」(同)