SNSのメリットのひとつに、頻繁に顔を合わさない友人や知人の近況を知ることができるという点がある。しかし、それは逆にいうと、人生のさまざまな節目において、他人との“格差”を目の当たりにすることでもあるのだ。
「現状のSNSは、まだ若者の利用が中心ですが、働き盛り世代の利用者の急増に伴い、今後は『SNSうつ』に陥る40~50代が増え、仕事に支障をきたしてしまうことも考えられるでしょう」(同)
内閣府が2011年に発表した「幸福度に関する研究会報告」によれば、「日本では年齢とともに幸福度が低下する」という。40代以上の中高年がSNSを利用するのは、自ら進んで幸福度を低下させる行為といっても過言ではないだろう。
医師が勧める「SNSうつ」防止法
では、「SNSうつ」に陥らないためにはどうすればいいのだろうか。「SNSで公開される写真=実生活」とは限らず、実際には“盛って”いるケースも多い。とはいえ、その盛られた写真に劣等感を抱いてしまうのがSNSの怖さだ。
森氏は、ついスマホに手を伸ばしてSNSを見てしまう人の場合、「体を動かすこと」が抑止力として効果的だという。
「運動をすると、ドーパミンと並んで体内で重要な役割を果たす神経伝達物質であり、心の安らぎに影響を与えるセロトニンが分泌されます。SNS疲れしている人は、1日10分でもいいので運動の習慣を取り入れると効果的です」(同)
実際、森氏はカウンセリングの際に1日のうちでSNSに費やした時間を記録してもらい、その時間を徐々に減らしつつ、趣味などほかのことに充てるように勧めるという。
「実生活が充実していれば、SNSでうつ状態になることはありません。SNSにのめり込まないためには、実生活にしっかり目を向け、やるべきことをしっかりやることが大切です。そして、SNSを利用するときは『自分がSNSに参加する目的』を自覚した上で見るのがいいでしょう」(同)
気軽な気持ちで始めたインスタグラムやフェイスブックに依存してしまい、さらには気持ちが追い詰められていく……。そんなことにならないためには「ツールを使いこなす」という本来の目的意識が大切なようだ。
(文=森江利子/清談社)