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約30万円のレッツノート、いまだ熱烈な信者が多数の理由…古さ&新しさ共存

文=Business Journal編集部、協力=西田宗千佳/ITジャーナリスト
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パナソニックの公式サイトより

 1996年のデビューから約30年たった今も熱烈な“信者”が多いパナソニック製ラップトップPC「レッツノート」。超薄型PCが主流となるなか、厚めの“無骨”なボディが特徴的で、外からの衝撃に強く壊れにくいという高い堅牢性と重量の軽さから、割高な価格ながらも多くのビジネスパーソンに支持されている。そんなレッツノートだが、現在のラップトップPC市場を俯瞰してみた場合、優位性は高いといえるのか。また、その価格と機能・性能等を勘案した場合、「買い」といえるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 ビジネスモバイルPCとしての使用を想定するレッツノートの最大の強みが、車のボンネットにヒントを得たボンネット構造による堅牢性だ。76cmの高さから電源を入れたまま落下させる試験や、カバンに入った状態での落下を想定して30cmの高さ、26方向から落下させる試験を行い、正常に動作することを確認。満員電車乗車時の外部からの圧迫や新幹線の背面テーブルでの作業時の振動、車移動時の振動などを想定し、100kgfの力で加圧しながら振動させても耐えられる耐久性を試験で確認している。それにより、落下時の非故障率91.2%、平均使用年数6.04年という結果につながっている(パナソニック調べ)。こうした頑丈性を維持しつつも約0.939kg(最軽量モデル)という軽さ、厚さ約19.9mmという薄さを実現している。

 このほか、以下のような特徴も魅力となっている。

・マウスが使えなくてもスムーズな操作性が可能となる大型ホイールパッド
・キーピッチ(横:19mm)、キーストローク(2mm)でリーフ型のため快適な打ち心地のキーボード
・ユーザ自身が交換できる着脱式バッテリー
・約7時間(動画再生時)、約15.5時間(アイドル時)の長時間駆動
・顔が画面の正面に向いていないことを検知した場合に画面が暗くなり電力の消費を抑制
・離席したときにPCを自動でロック
・第三者に「のぞき見」されている可能性がある場合の通知
・入出力の接続ポートとしてDC-IN、HDMI接続、USB3.1 Type-Cが2つ、USB3.0 Type-Aが3つ、有線LAN、アナログRGB、SDメモリーカード、セキュリティスロットを装備
・ボックス型スピーカー:音圧が高く、ヘッドセットなしでも人の声が明瞭に聞こえる。より遠くまで音が届くので、複数人の会議でも別途スピーカー不要
・2つのマイクを使って、マイク正面以外の音(片方のマイクでしか拾っていない音)を減量し、周囲の雑音をカット。全方向に設定すると、会議室内の5~6m離れた席にいる人の声もきれいに相手に伝えられる
・CPU性能の最大化を目指した独自技術「Maxperformer(マックスパフォーマー)」を搭載し、バッテリー駆動時でも最適なパフォーマンスと省電力化を実現
・4年間の無償保証(法人向け)

 まさに至れり尽くせりの機能を兼ね備えているだけに、価格は高い。カスタマイズレッツノートは12.4inchのSR SERIES、14.0inchのFV SERIES、12.4inchでタブレット使いも可能なQR SERIESの3種類があり、もっとも安いSR SERIESでも28万9300円~(税込み/以下同)、QR SERIESは33万7700円~となっている。

●SR SERIES 基本仕様
 ・OS:Windows 11 Pro 64ビット(日本語版) 
 ・CPU:インテル Core i5-1345U プロセッサー 
 ・メインメモリー:16GB(LPDDR4x SDRAM)拡張スロットなし
 ・SSD:512GB / SSD1TB選択可(すべてPCIe)
 ・表示方式:12.4型(3:2)TFTカラー液晶 FHD+(1920×1280ドット)
 ・ワイヤレスWAN:ワイヤレスWANモジュール内蔵(LTE(4G)(nano SIMカード+eSIM)対応) / ワイヤレスWANモジュール非内蔵選択可

 強気の価格設定にもかかわらず人気は高い。2023年の法人向けウルトラポータブルPCではシェア1位を獲得(IDC Japan調べ)。「日経コンピュータ 顧客満足度調査 2023-2024」では、ノートPC部門で2年連続の顧客満足度1位を獲得している。

保守的なニーズから最新のニーズまでカバー

 レッツノートのラップトップPC市場における優位性について、ITジャーナリストの西田宗千佳氏はいう。

「ボディに厚みがあるため満員電車で押されても故障しづらいつくりになっていたり、接続ポートが古いものから最新のものまでフルラインナップで備わっていたりと、保守的なニーズまでカバーできるよう意識された商品といえます。なので、レッツノートをめぐってよくいわれる『古臭い』という評価は、少なくとも機能については的外れであり、ビジネスシーンにおけるニーズに対応しているという言い方が適当ではないでしょうか。

 たとえば、他社メーカーのPCでは最新仕様の接続ポートしか装備されておらず、古い仕様のポートをつなぐには外付けハブを用意する必要がありますが、レッツノートでは本体だけで対応できることが多くなっています。現在の一般的なオフィスでは無線LANやHDMI接続のプロジェクターなどが当たり前になっていますが、最新環境のオフィスばかりとは限らず、アナログRGB接続のプロジェクターしかないといったところもあります。最新の環境にも対応できる一方、古いものも含めてあらゆるビジネスシーンとニーズにPC一台で対応できるよう設計されているというのは、レッツノートの大きな特徴です。

 こうした機能・性能等から総合的に判断すると十分に『買い』であると評価でき、それゆえに多くの企業から採用されているのだと考えられます。裏を返せば、PC操作時の第三者による『のぞき見』を検知する機能がある点や、総じて性能が高い点などから、個人で買うというケースはあまり想定されていません」

 こうしたレッツノートで培われた技術は、パナソニックの他の用途向けPCに生かされているという。

「米軍をはじめとする各国の軍隊、警察、消防、工場など過酷な現場で使われる頑丈な特殊PCの市場では、パナソニックの『タフブック』が大きなシェアを持っています。こうした商品もレッツノートの延長線上で開発・製造されているといえます」(西田氏)

(文=Business Journal編集部、協力=西田宗千佳/ITジャーナリスト)

西田宗千佳/ITジャーナリスト

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「ポケモンGOは終わらない」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)、「ネットフリックスの時代」(講談社現代新書)、「iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)がある。
https://about.me/mnishi

Twitter:@mnishi41

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