ニコ動の新有料メルマガ&ブログ「ブロマガ」って儲かります?
――個人的な感覚だと、ウェブブラウザーで見ている無形のコンテンツに対してお金を払うという感覚が、ユーザーに根付いていない気がします。その辺の感覚は今後、世代が下ってくると変わっていくものなんでしょうか?
杉本 10代、20代の子たちは変わってきてると思います。だからこそ今、ニコニコ動画は、月525円を払う「プレミアム会員」が約170万ユーザーいて維持できている。もう少し時代が進むと、デバイスが変わったときに、課金の感覚がリセットされると思います。PCでは無料だったものが、タブレットならお金を払うという状況も出てくるはず。電子書籍がまさにそうで、PC上でPDFで見るならタダだけど、同じものをiPadで読むときには、なんとなくお金を払っていいような気になる。その変化は今後、加速していく。
そうした時代が来たときに、同じウェブブラウザー上でも、このプラットフォームには金を払うけど、こっちは払わないという状況が出てきたらいいな、というのがわれわれの希望ですね。でも、昔に比べると、だいぶお金を払うという感覚が出てきたと思いますよ。
宮原 税金は何に使われているかがわかりにくいですが、ブロマガなら自分の見たいものに投資してつながってる実感がありますよね。今後は「この人ならお金を払う」という状況になっていくんじゃないか。アメリカで寄付が盛んなのは、それが税金で優遇されることと、何に使ったのかが可視化されるから。コンテンツ自体じゃなくて、その発信者にきちんと払う流れが出てきたら、いろいろ変わるのかなと感じています。
●払いたい人は、より多く払う時代
――コンテンツが電子化されると、有形のときより安くなければいけないプレッシャーをユーザーがかけてきそうです。そこで書き手の利益は成り立ちますか?
杉本 コンテンツの単価自体も変わっていくと思います。それは僕らがそうしてほしいのではなく、ブロマガの読者から「こんなに価値あるコンテンツなら、もっと上げてもいいんじゃないか」という議論が出てきて、ブロマガのオーナーもより評価されるなら単価に反映していく流れになる。もっというと、ブロマガの機能として実装するかわかりませんが、払いたい人がより多く払うという時代に来ている。
例えば、津田大介さんみたいな方なら、動画を無料で全部見られるようにしてしまっても、お金を払ってもらえると思います。そこで消費して終わりという話じゃなくて、津田さんと読者のつながりの話なので、コンテンツを提供してもらうことに、きちんと対価を払おうという関係ができていくと思う。これは既存の書籍やCDを買う行為とは別モノです。
宮原 既存のメディアでは、発信者と読者が直接つながれなかった状況もあるかと思います。書籍やCDは買うけど、それは好きなクリエイターやアーティストに払っている感覚ではない。だから、講演会やライブに行ったりするわけですが、ブロマガなら、この中で全部つながれる。その人に対価を払っているので、コンテンツが無料でも、お布施するという状況も出てくると思います。
――コンテンツではなく、作り手にお金を払うという。
杉本 そういう意味だと、評価されていいものだとみんなが認識すればするほど、モノの価格は上がっていくと思います。ニコニコ動画でも、以前、ライブイベント「ニコニコ超パーティー」の生放送を見るための有料チケットを徐々に値上げしていったことがありました。初期の出演者がほとんどわからないうちは価格が安くて、詳細が明らかになっていくうちに値上げされていくのと同じです。コンテンツでは、もともと原価という概念も薄い。今までは減価償却されたので価格が下がるという流れでしたが、これからはコンテンツでは逆に上がっていくのではないでしょうか。
(構成=広田稔)
※前回記事はこちら
『炎上は成功?小沢一郎、GACKT…有名人たちが始めたブロマガって何?』