差し替え寸前だった『刀剣乱舞』
『刀剣乱舞』では、絵師のIzumi氏が担当したキャラクターの衣装について、差し替えが行われそうになった。こちらはゲームスタート時から使われてきたイラストだが、和装の帯結びについて、現在は主に女性用とされている結び方であることが明らかになったのがきっかけだ。
こちらは少々話が複雑で、その帯結びについてIzumi氏は直接的な苦情や攻撃を受けていないと思われる。しかし、そこから発展し、女性用や若衆(江戸時代の同性愛的関係において受け手側の役割を担う少年)が主に使う結び方だった、という豆知識が広がった。
Izumi氏は過去に、同じキャラクターについて女性的に描いているという批判を受けたことがある。今回、直接批判がなくとも、話の流れから再び同様の反応が起きることを懸念したのかもしれない。帯のイラストは削除され、Izumi氏は女性的な帯結びを採用したことを「マナー違反だった」と謝罪、公式イラストの差し替えを行うと発言した。
後に運営側は差し替えを行わないと発表したことで騒動は収束したが、ユーザーが騒ぎ立てたことで差し替え寸前にまで至った例だ。
ユーザー、イラストレーター、運営、それぞれに求められるマナーと姿勢
コザキ氏は後にブログで、イラストの差し替えが非常に特殊な事例であることを明かすとともに、ユーザーに宛てて「運営会社やイラストレーターに対し、不特定多数の人が見られる状況で表立って批判することは控えてほしい」という願いを発信した。同じく、『刀剣乱舞』の運営会社も、「イラストレーターに直接問い合わせることはお控えください」というメッセージを出している。
Twitterという場は、何を言ってもいいという雰囲気がある。実際、個人的な感想は自由に述べていいはずだとの意見もあるだろう。もちろん、よほどひどい言い方でなければ感想をオープンに述べることは自由であるべきだ。運営会社もイラストレーターも、単なる感想ならば、それはそれとして受け止めるか聞き流すかを自己判断するだろう。
ただし、Twitterで直接イラストレーターなどにぶつけるのは、あまり良い方法とはいえない。例えば、手紙や電子メールであれば、本人がゆっくりと対応を考えることができる。知人であれば、直接会って穏やかに会話することも可能だろう。しかし、Twitterでは即座に反応を求められがちだ。自分に向けられた発言を無視して、他のことをつぶやくことははばかられる雰囲気がある。また、不特定多数の他人がやりとりを見ることができるため、横やりを入れる人や一部を切り取って拡散する人が現れる。そのため、本意ではないかたちで情報が広まる可能性があるのだ。
本当にそのゲームやキャラクターが好きならば、要望は運営会社等が設けているメールフォーム等を使って申し立てるなど、ユーザー側は節度を保つべきだろう。
一方、こうした騒動の責任が一部の図々しいユーザーにだけあるとも思えない。聞いた側が聞き流せばよかったともいえる。ユーザーと作り手側の距離が近くなった今、単なる感想は感想として受け止め、安易に振り回されない姿勢を、運営会社やイラストレーターも持たなければならないのではないだろうか。
(文=編集部)