絵を描くことを趣味とする人が、自分の作品を手軽に発表できる場が増えている。ウェブサイトやブログを開設している人は20年近く前からいるが、現在、イラストを通したコミュニケーションの主要な場といえば「pixiv」だろう。誰もが手軽に絵を発表することができ、閲覧者も気軽に評価できるため、誰のどの絵に人気があるのかもわかりやすい。
pixivの登場で、絵を発表しやすくなったのと同時に、上手な絵を描く人を探すのも簡単になった。しかし、それは単純にイラスト愛好家が楽しむ分にはよかったが、この場を悪用して、いわゆる「絵師狩り」をしている業者がいるようだ。
●絵を安く買い叩く業者たち
一部の業者がpixivを使って安く絵をかき集めようとしている、という話が増えたのはソーシャルゲームが盛り上がり始めた頃だ。次々とリリースするゲームに大量に投入するカード画像を用意するために、既存のプロイラストレーターだけでは手が足りなかったのかもしれない。しかしそれよりも足りなかったのは予算だろう。
短納期で安い原稿料、そして無限のリテイク(描き直し)。プロなら絶対に受けないような悪条件にもかかわらず、これまで好きに絵を描いて発表しているだけだった人々のうち、できればプロとして仕事をしてみたいと夢を見ていたような層が引っかかった。
もしも人気が出た時には大きく使いたいからと、非常に大きなサイズで精細に描き込むことを要求されたり、イベント用の差分を大量に用意させられたりと労力も多く、割に合わないという声が方々から上がっていた。
同じようなことはその後も続いており、紙媒体でもネット媒体でも、ほとんどボランティアともいえる1カット数百円程度で描かせようとする業者があるようだ。
もちろん、描く本人が納得していれば、タダで描こうが1枚100円だろうが問題はない。しかしたいていは、相場を知らない素人がだまされて使われているだけだ。安すぎると感じても、自分の絵にどれだけの値段をつけてよいのかわからないという場合も多くあるだろう。迷った時には受けない、または完全なタダ働きになってもあきらめられる程度の少量の仕事しか受けないようにすることをお勧めしたい。