また、この件を一般市民の目に触れる媒体には掲載せず、議員への内示資料にしか記載しないのは、市当局が隠密に進めようとしていることの現れではないか。
前出の大澤氏は、予算についても、こう断じる。
「普通、同じ教育委員会のなかでは、学校教育費と社会教育費または図書館費は費目も管理もまったく違うもので、一緒にすることはしません。教育委員会全体にわたる事業については、教育委員会総務費などで実施する場合もありますが、これは事業の性格が違うので、この費目では一緒にすることはあり得ないと思います。和歌山市の例はまったくめちゃくちゃなやり方で、こんなことがまかり通るなら、予算の中立性もなきに等しいと思います」
市民団体が抗議活動
市民が知らないところで、学校図書館のCCC委託が水面下で進められているわけだ。だが、この事実を把握した地元市民団体が6月上旬、原一起教育長宛てに申し入れを行い、図書館側に説明を求めた。しかし、納得のいく回答を得られなかったとして7月から、市議会へ「学校図書館のTSUTAYA委託反対」の請願を提出するための署名活動をスタートした。この請願に、ひとりでも多くの署名を集めたうえで、遅くとも12月議会には提出する予定だ。
7月3日には、市議会の本会議でも一波乱があった。当サイトが南海市駅再開発の談合疑惑をたて続けに報じたが、和歌山市議会では「CCC批判の質問はタブー」と囁かれていた。そんななか、4月に26歳で当選したばかりの中庄谷孝次郎市議(日本維新の会)が初の一般質問に立ち、忖度なしにこの問題を取り上げた。
「学校図書館をCCCに委託するとした決定は、誰がどのようにしたのか。また、市民への十分な説明や議論がないまま決定したのではないのか」との中庄谷市議の質問に対して、津守和宏教育局長は、以下のような苦しい答弁に終始した。
(1)教育委員会で承認された「学校との連携を強化する」方策のひとつとして実施している
(2)市民図書館の指定管理者公募時にも、それに関する提案を求めていた
(3)適正に選定された指定管理者が、学校司書を配置することに、なんら問題はない
いずれも、典型的な“論点ずらし”だ。中庄谷市議の「民意を問うたのか?」とのストレートな質問に、正面から回答していない。肩透かしをくらった格好となった中庄谷市議は、「とにかく、結論ありきという感じで、まともな議論にはなりませんでした」とあきれる。
なぜか、ツタヤ図書館を誘致する自治体は民意を無視する傾向があり、和歌山市でも日に日にそれが顕著になってきている。
だが、取材を進めると、学校図書館の民間委託は、和歌山市だけの問題ではないことがわかった。実は日本全国で問題が噴出しており、とりわけ学校図書館の業務委託をめぐっては、重大な違法行為が摘発される事件にも発展していることが明らかになった。
次回は、ある自治体で起きた、学校図書館の“偽装請負事件”を紹介したい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)