「意外に少ないものだな」というのが、素直な感想だ。
警察庁が9月に発表した、「行政対象暴力に関するアンケート(自治体対象)」によると、回答のあった全国の地方公共団体676団体(2905部門)のうち、「最近1年間に暴力団等反社会的勢力からの不当要求等を受けたことがある」と回答したのは、わずか94件だった。
また、「過去に暴力団等反社会的勢力から許認可、工事等の契約、指導監督、公金支給等の権限行使や機関紙の購読、物品の購入等に関して違法な行為や不当な要求を受けた経験がある」と回答したのは285件だ。同様の質問に対する近年のピークは2007年の1010件で、それから70%以上も減少している。
これは、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(暴対法)、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(組織犯罪処罰法)、「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律」(テロ資金提供処罰法)などの一連の暴力団等反社会的勢力の取り締まり強化により、反社会的勢力が弱体化してきたからだろう。
前述の「最近1年間で不当要求等があった」という94件の内訳を見てみよう。不当要求等の内容で多いのは「機関紙の購入」(15件)、「公共事業等の受注業者に対する行政指導等」(14件)、「許認可等の決定」(11件)の順となっている。
また、要求の方法で多いのは「電話をかけてきた」(61件)、「来庁してきた」(57件)となっており、来庁してきた57件の内訳は「大声を出すなど、言動や態度で威圧」(37件)、「居座り続け」(16件)、「執拗に来庁した」(13件)というものだ。
そして、驚くべきは以下の内容である。地方公共団体自らが暴力団排除条例をつくったり、民間企業や個人に厳しく指導したりしているにもかかわらず、不当要求等を受けた94件のうち、「当初、拒否したが最終的には不当要求等の一部に応じた」(7件)、「すべての不当要求等に応じた」(3件)と、合計10件が不当要求等に応じているのだ。
その理由の筆頭は「当方にも一部非があったから」(4件)という、なんともお粗末なものだ。
不当要求等は「あくまで不当なもの」であり、たとえ地方公共団体側に非があったとしても、不当なものを受け入れてはならないのは当然だ。