そんな日本の年金制度に対する評価は、世界的に見ても低い。世界最大級の人事・組織コンサルティング会社、マーサーが10月20日に発表した「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング(Melbourne Mercer Global Pension Index 2015)」によると、世界主要国25カ国中、日本は23位だ。南アフリカやブラジル、メキシコ、インドネシア、中国よりも低いと格付けされている。「国家ブランド指数」をはじめ、数々の世界ランキングで常に上位をキープする日本にとっては、かなり珍しい結果となった。
しかし、そんな日本の年金制度をバカにできない国家がある。年金指数ランキングで24位という低評価を受けた韓国だ。
韓国の公的年金には「公務員年金」や「軍人年金」などいくつかの種類があるが、圧倒的に加入者が多いのは「国民年金」。2015年5月の時点で、加入者は2113万人となっている。韓国の国民年金の保険料は、自営業者などは所得月額の9%を自分で支払い、サラリーマンなどの被雇用者は同9%を会社と折半で支払っているという。自営業者でも一律の金額ではなく、所得額に比例して保険料を支払う点は、日本と大きく異なる点だ。
そんな韓国の年金制度だが、何かと問題が多いことで知られている。
最大の問題点は、そもそも国民年金の加入率が低い点だ。韓国統計庁によると、15年5月時点で勤労者の国民年金加入率は68.9%で、残りの31.1%は年金未加入者ということになる。さらに、月収400万ウォン(約40万円)以上の勤労者の加入率は96.6%と高い一方で、月収100万ウォン(約10万円)以下の低所得者になると、15.0%まで下がることもわかった。月収100~200万ウォン(約10~20万円)の層も60.7%と低い。つまり、お金持ちと貧乏人とで“年金格差”が生じているのが現状なのだ。
また、積立金の枯渇問題も起きている。国民年金の積立金は決して少なくはなく、14年11月時点で約468兆4000億ウォン(約46兆8400億円)と、GDPの30%にも上る。しかし、そんな大金を運用する国民年金基金運営本部の収益率が10%未満と低調で、物価の上昇や金利を考慮すると「元金マイナス」との指摘が多い。最近、投資したサムスン物産と第一毛織の合併時にも、主要株主としての対応が遅れ、数千億ウォンの株式評価損を記録。「基金運用本部が意図的にサムスン一家の利害関係に尽くした」という非難も聞こえてくる。国民年金の積立金を特定企業のために運用していたとなれば大問題だ。
韓国の年金制度はまだ歴史が浅いが、早くも暗雲が漂っている。高齢者の貧困率が46.9%と異常に高い韓国だけに、年金制度が破綻するとなれば深刻さは日本以上だろう。
(文=ピッチコミュニケーションズ)