10月10日に告示された参議院の埼玉選挙区補欠選挙(投開票は27日)。告示2日前にNHKから国民を守る党(N国)の立花孝志党首(52)が、参院議員バッチを捨てて補選に打って出ると発表したことで注目が集まっている。補選は立花氏vs.上田清司・前埼玉県知事(71)の一騎打ちの構図。
立花氏の戦略は明快だ。自身は参院議員になったものの、元N国の東京都中央区議に対する恐喝容疑で書類送検され、当初「有罪になったら辞職する」と強気だったものの、「実刑になったら」と前言を翻すなど迷走気味だった。そこで、自らの議席を投げ捨て、補選挑戦という“英断”に出ることで、書類送検による辞職という汚名をチャラにし、逆に無投票選挙になりかねなかった有権者に選択肢を与えることで“英雄”になろうとしているのだ。
参院議員を辞めて再び参院議員を目指すというのはメチャクチャな論理だが、比例代表で当選した立花氏が辞職しても、次点が繰り上げとなるから、N国は国政での議席を失わない。むしろ「補選に勝利すれば参議院で2議席目を獲得できる可能性がある」と訴えるのは、正当性があるように有権者に映る。うまい手である。
こうなってくると、惨めなのは上田氏を支援する野党の面々だ。8月の埼玉県知事選で上田氏が応援した元国民民主党参院議員の大野元裕氏が勝利したが、この際、立憲民主党、国民民主党、社民党、共産党の野党4党は、上田氏と共に大野氏を支援した。その延長線上で、立憲民主や国民民主は今回の補選で上田氏を支援している。
ところが自民党も独自候補擁立を断念して上田氏に事実上相乗りした。さすがに党として推薦や支持を明確にすることはなかったが、上田氏が出馬表明の記者会見で、「憲法改正に積極的」な態度を見せたので、「だったら上田氏でいいんじゃないか」という空気が自民党内に広がったのだ。
もっともこれはシナリオ通り。もともと上田氏は自民党の二階俊博幹事長と近い。2人はかつて新生党や新進党で同じ釜の飯を食っている。今も交流があり、「出馬前に上田氏は二階幹事長に挨拶に行った」という情報もある。