今後は、県に加えて市町村と自衛隊の関係も整理される必要があります。相次ぐ激甚災害への対応をふまえ、「緊急時に県知事の要請がなくても自衛隊が出動できる」というところまで制度面の整備は進みましたが、さらに、実施面で多くの課題が残っています。
市町村内に自衛隊の駐屯地のある自治体の場合などでは、相互の連携がうまくいくケースが見られます。日ごろから自治体関係者が自衛隊の行事に参加したり、自衛隊OBが災害担当の自治体職員として採用されていたりして、公私を超えて関係が構築できているからです。山北町のケースは県境もまたいでいました。これが静岡県と同県内の市町村と駐屯地という関係であればまた違う状況もあったかもしれません。
また台風15号で広範囲かつ長時間の停電が発生した千葉県の事例もそうです。森田健作知事による自衛隊への派遣要請が遅れたという指摘もありましたが、一方で、被災地の状況を把握して自衛隊が自主派遣として出動すればよかったという指摘もあります。しかし、今まで大災害の経験があまりない房総半島の現場の自治体が、普段連携のない自衛隊とうまく連絡をとりあって対応できたのかという疑問も残ります。
自衛隊も被災地の状況をつぶさに把握しているわけではありません。限られた装備と人員で自衛隊も任務を遂行しており、偵察部隊を被災地全域に展開することも現実的ではないといえます。
大規模災害で、救急救命でいうところのトリアージに似た判断を、どこの誰が行うのか。被害情報の共有を国、自衛隊、都道府県、市町村の間でどのように行うのか。情報共有と連携の枠組みをもう一度、整備する必要があります。
地方分権改革が進み、政府が中央集権的に情報収集や指揮管理を行う災害対応に加え、それぞれの自治体が主体的に防災に取り組む姿勢が求められています。南海トラフ地震や首都直下地震が発生することを考えると、まだまだ現状の体制では不安は大きいです。次の激甚災害まで、準備の時間は多くはありません。自治体や自衛隊は、こうした連携体制のあり方について喫緊の課題として取り組むべきだと思います。
(文=編集部)