安倍政権は、今年4月1日からスタートした上限1000万円で祖父母や親が子や孫の結婚や出産、子育て等の費用を贈与した場合に贈与税を非課税にする「子育て贈与」の対象を拡大する方針。産前産後の妊婦の医療費や薬代、産後の健康診断費用、不妊治療の医薬品代について贈与税を非課税にする方向で、2016年度の税制改正大綱に盛り込む方針だ。
「子育て贈与」の対象で目を引くのは「不妊治療」だろう。ところが、この「不妊治療」関連は非常にわかりづらい。実は15年度の対象にも「不妊治療」が入っている。妊娠・出産・育児関係で認められる費目として、不妊治療にかかる費用があり、そこでは、「男女の別に関係なく、また保険適用の有無に関係なく、(1)人工授精、(2)体外受精、(3)顕微授精、(4)その他一般的な不妊治療に要する費用が対象となる。公的助成を受けているかどうかに関係なく、実際に病院等に支払った金額が対象となる」としている。
では、16年度に認めようとしている「不妊治療の医薬品代」とは15年度に認められているものとどこが違うのか。15年度に認められている(4)の「その他一般的な不妊治療に要する費用」に医薬品代が含まれているのではないか、という疑問が湧いてくる。
実は、このあたりがよくわからないのだ。さらに、よくわからないという点では、「不妊治療」に対する助成も同様だ。
まず、不妊症に関する基礎的な情報を整理してみよう。不妊症は、全夫婦の約10~15%で発生するといわれている。その割合は、女性不妊症が30~40%、男性不妊症が50%程度、原因不明の機能性不妊症が10~20%となっている。意外なことに、女性よりも男性のほうに不妊症が多い。
女性は、排卵障害、卵管性不妊症、子宮性不妊症、子宮内膜症などの不妊症があり、男性は造精機能障害、精路通過障害、副性器障害、精機能障害などの不妊症がある。女性に対する治療法としては、排卵誘発剤などの薬物療法、卵管性や子宮性の不妊症に対する手術療法など、男性には造精機能障害への薬物療法、精路通過障害などへの手術療法が行われる。そして、これらの治療には、「健康保険が適用される」ようになっている。
「健康保険が適用されない」不妊治療として、人工授精、体外受精、顕微授精がある。人工受精で1回あたり1万5000円程度、体外受精で1回あたり20~50万円、顕微授精がもっとも高く1回あたり100万円程度するケースもある。