消費者が企業活動に抱く疑問を考察するサイト ビジネスジャーナル ⁄ Business Journal
新制度の効果に疑問
しかし、04年4月には厚生労働省が費用の高額な体外受精と顕微授精に対して「特定治療支援事業」を創設し、体外受精および顕微授精以外での妊娠の見込みがないか、極めて少ないと診断され、法律上婚姻をしており、夫婦の年収が650万円以下であることを要件に、年間10万円を限度に通算で2年間の資金助成を開始した。
この制度はその後、給付資格、給付内容、支給期間などが改正され、現在では夫婦の年収が730万円以下であることを要件に、1回あたり15万円を年2回まで、通算5年間支給するようになっている。
こうした公的な助成制度の効果もあり、体外受精・顕微授精による出生児数は、04年の1万8168人(総出生児数の1.64%)から10年には2万8945人(同2.70%)にまで大きく増加している。
加えて、国の助成よりも早くから地方公共団体では不妊治療の助成が行われており、さらに近年では多くの地方公共団体が健康保険適用での治療における自己負担に対する助成、健康保険が適用されない体外受精・顕微授精に対する国の助成へ加算する上乗せ給付などを実施している。
こうなると、わざわざ贈与税を非課税にする「子育て贈与」の対象に不妊治療を加えることが、果たしていくばくの効果があるのかが疑問になってくる。もちろん、少子化の最大の対策は子供を増やすことだが、「不妊治療」に対する健康保険、地方公共団体、国の公的助成の充実ぶりを考えると、「不妊治療」以外のたとえば乳幼児や小児の重大な病気に対する助成の充実・拡大など、ほかに考えるべきことがあるのではないかと思える。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
Business news pick up
RANKING
23:30更新関連記事
2024.10.22 06:00
2024.10.05 06:00
2024.10.04 18:50
2024.10.02 06:00