ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 少年犯罪、偏食や一人食と因果関係か
NEW

凶悪少年犯罪、親の料理を食べる習慣の少なさと因果関係か 偏食や一人夕食も 警察調査

文=郡司和夫/ジャーナリスト
【この記事のキーワード】, ,

凶悪少年犯罪、親の料理を食べる習慣の少なさと因果関係か 偏食や一人夕食も 警察調査の画像1「Thinkstock」より
 神奈川県川崎市の中学1年生、上村遼太君殺害事件で、17~18歳の知人少年3人が殺人容疑で逮捕された。首を刃物で切るという残酷な手口は、世の親たちの心胆を寒からしめた。週刊誌の中には、事件の背景に過激派組織「イスラム国」の影響を取り上げているものもある。また、2013年に広島県内で16歳の少女が、無料通話・メッセージングアプリのLINE上で起きたけんかをきっかけにLINE仲間の少女ら6人に殺された事件同様、LINEの存在と事件の関連性を指摘している報道も多い。確かにLINEとそれぞれ事件は、無関係ではないだろう。

 だが、筆者はジャンクフードやファーストフードに依存した少年らの食生活が、少年凶悪犯罪を生み出している大きな要因だと考えている。犯人の少年らはどんな食生活を送ってきたのか。殺人容疑で逮捕された少年たちは、ゲームセンターを中心に深夜徘徊を繰り返していたという。また、事件直前の夜、逮捕された少年の自宅に集まり酒を飲み、その後、近くの中華料理店に行き、そこで上村君と合流したと報じられている。深夜徘徊や飲酒というのだから、逮捕された少年たちの日頃の食生活が相当に荒廃したものであったことは間違いないだろう。

食事を一緒に取らなくなったことが事件の一因に

 筆者がこれまで取材してきた凶悪少年犯罪にも、犯人の食生活が大きな影響を及ぼしていた。「中央公論」(中央公論新社/00年10月号)の記事『17歳は何を食べてきたか』において、少年犯罪と食のルポを掲載したが、「宇都宮会社員リンチ殺人事件」で、無期懲役となった17歳少年(当時)の母親は「夕飯だけでもしっかり食べさせてやっていれば、こんな事件は絶対に起こさなかったはずです」と、涙ながらに語っていたのを鮮明に覚えている。

 1999年12月、栃木県宇都宮市を舞台に起きた17歳の少年3人組による会社員リンチ殺人事件は凄惨なものだった。被害者は市内に住む19歳の男性会社員で、少年3人組に殺されるまでの50日間近く「金づる」として連れ回され、シャワーの熱湯や殺虫剤スプレーに引火させた炎を全身に浴びさせられるなどのリンチを受け続けた挙げ句、山林に埋められた。主犯のA少年の父親が地元警察署の幹部だったのも衝撃的だった。3人組の1人の母親は、「被害者のご両親には申し訳ない気持ちでいっぱいで、言葉もありません」と謝罪した後、筆者にこう語った。

「主犯のA少年とは中学校同級生なのですが、付き合いはありませんでした。A少年は中学時代からこの辺では札付きのワルで有名でした。うちの子は誘われると断れないタイプなので、中学校の時は先生が配慮してA少年とはクラスを3年間同じにしなかったくらいです。私も息子にA少年とは『絶対に付き合うな』と口すっぱく言っていまして、本人も『わかっているよ』と言っていたのです。それが、どうしてか付き合うようになってしまいました」

 親子の共通認識として、A少年とは付き合わないように意識していたというのだ。

「息子は高校を中退し働いていたのですが、交通事故で怪我をして仕事を休んでいました。パチンコが好きで休職中も近所のパチンコ屋とかゲームセンターによく出かけていました。そこで、偶然A少年と会ってしまったのです。それからは息子の携帯に1日に何十回としつこく呼び出しの電話がかかってくるようになりました。いま思うとその頃、無理をしてでも晩の食事を息子と一緒に食べていればよかったのです。離婚してから仕事で私の帰りが遅くなり、食事の用意がほとんどできなくなってしまいました。少なくとも食事の用意をしていれば、夜、食事をしに外に出ることもなく、A少年と会うこともなかったはずです。息子はそのうち家に帰らなくなってきました。どこにいたのか聞くと『友達の所に泊まった』と言いました。その時、ひっぱたいても外泊をやめさせればよかったのです。悪いことはやはり夜起こります」(同)

 犯人少年の母親は、夕飯を息子と一緒に取れなくなったことが事件の大きな要因になっていると本能的に感じたのだ。

食習慣と犯罪の関係

 筆者が取材した限りでは、2000年の佐賀西鉄バスジャック事件も犯人少年の食生活の影響が大きいものだった。犯人の少年が唯一心を開いていたという中学1年生時の担任教師は、「私は彼が高校へ入学し、引きこもりになったときの食生活が非常に気になります。彼は偏食傾向が強かった」と語った。中学の卒業アルバムにも「好き嫌いするんじゃねー、何でも食べよら」「サイダー飲んだら骨溶ける」「牛乳飲めよ」等の寄せ書きが、彼に寄せられている。高校入学後、引きこもってからはますます偏食傾向が強まったと思われる。母親から相談を受けた前出の教師は少年の自宅を訪問したが、父親も母親も少年の言いなりになっているのに驚いたという。

「父親に対して『お茶』と命令口調で言う。父親はそれでもニコニコしている。私が『お茶をください、だろう』というと、彼は『ははは』と笑っていました」

 少年の両親は大学病院カウンセラーに相談しており、カウンセラーは「子どもの言うことはすべて受け入れなさい」と、両親にアドバイスしたという。当然、食事も子どもの食べたいものばかりになっていたはずだ。しかし、子どもの要求を受け入れすべて満たしてやれば親は“子どもの奴隷”となり、子どもは“欲望の奴隷”になってしまう。人を健康に育むはずの食が欲望のままになれば、それはまさしく食の「餌」化で、行動も動物同様、欲望のままになる。

「少年犯罪と食」の関係については、以前から警察でも大きな関心を抱いている。98年に茨城県警、02年に群馬県警から少年犯罪と食についての調査報告が発表されている。県内で検挙・補導された中学生・高校生とほぼ同数の一般の中高生との食生活を比較したものであるが、両県警の調査結果はほぼ同じとなっている。「朝食を一人で食べる」「家以外で朝食を食べる」「夕食を一人で食べる」「家族で鍋を囲むことがない」というのが、非行少年、特に粗暴犯の大きな特徴である。また、間食では非行少年のほうがジュース類を一般少年らより多く飲んでいる。食事の好き嫌いをみると、非行少年は果物、牛乳、おひたし、ごまあえ、ご飯、野菜、味噌汁、魚の煮物が嫌いな子が多い。朝からカップ麺を食べるという子も非行少年には何人かいた。

 茨城県警察本部少年課では「食事を親に作ってもらい、それを食するという習慣の乏しさは、非行と関係することがうかがえる」と、考察している。

 お父さん、お母さんへ。息子、娘たちと週に一度は必ず一緒に食事をしようではありませんか。子どもたちのSOSもキャッチできるはずです。
(文=郡司和夫/ジャーナリスト)

郡司和夫/食品ジャーナリスト

郡司和夫/食品ジャーナリスト

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法政大学卒。食品汚染、環境問題の一線に立ち、雑誌の特集記事を中心に執筆活動を行っている。主な著書に『「赤ちゃん」が危ない』(情報センター出版局)、『食品のカラクリ』(宝島社)、『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)、『シックハウス症候群』(東洋経済新報社)、『体をこわす添加物から身を守る本』(三笠書房・知的生き方文庫)など多数。

凶悪少年犯罪、親の料理を食べる習慣の少なさと因果関係か 偏食や一人夕食も 警察調査のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!