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バスで乗りつけた大勢のインバウンド、住民の生活圏で大騒ぎ…京都、日本人観光客離れ

文=山田稔/ジャーナリスト
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 全国各地の観光地で日常茶飯に見られる光景である。なかには住民や行政の取り組みで多少の改善がみられているところもあるだろうが、政府が目標にしている「訪日外国人旅行者年間4000万人」が現実となれば、これまで以上のトラブル、観光公害の広がりが懸念される。

日本人観光客の「京都離れ」進む

 観光公害の深刻化が大きな問題となっている京都では、喧騒を嫌う日本人観光客が減少するという事態が生じている。2018年の京都市の観光消費額は1兆3082億円。3年連続の1兆円を超え、前年比16.1%増だった。外国人宿泊数は27.6%増の450万人と増え続けている。ところが、日帰りを含めた観光客数は3年連続減少となる5275万人にとどまった。日本人の観光客が減少しているのだ。

 日本人観光客の満足度が下がっているのだろうか。京都市観光協会が「京都観光総合調査」をもとに集計したデータのなかに、「観光客の愛着度(NPS)の推移」がある。京都観光を親しい友人に勧めたいと思うかどうかについての回答結果を基に集計した指標だ。それによると外国人観光客は53.0(18年)と高い水準だが、日本人は16.7にとどまっている。16年の20.4から年々低下しているのだ。また満足度構造の調査では、日本人観光客の評価が低いのは「飲食」「交通」「トイレ」「渋滞」となっている。

 少子高齢化で国内消費が落ち込んでいくなか、インバウンド誘致による観光消費額の拡大は日本経済や地域経済には欠かせない経済基盤となる。その一方で深刻化する観光公害にどう対処していくのか。入域規制、交通規制、建築規制、景観規制、宿泊税、入山料、観光の分散化などさまざまな手法での取り組みが始まっているが、すぐに効果があらわれるものではない。

 まずは観光公害の実態や日本の地方慣習などを動画などでわかりやすく世界に向けて情報発信し、観光業界、観光客らに知らせることが重要ではないだろうか。ラグビーのワールドカップでイギリスの外務省が、訪日英国人向けにトラブル防止のための“心得動画”を作成して話題となった。外国人旅行者らに向けた啓発活動を国、地方自治体がうまくリードしていくことが先決だろう。

 ラグビーワールドカップのキャンプや1次リーグの試合が行われた福岡では、大幅に減少した韓国人観光客に代わって欧米系観光客が増えた。地元の観光業者は「これが本物のインバウンド観光だな」と口にしていた。東京五輪に向け、訪日客はさらに増加していく。そんな観光客と地域の人々が不快な思いをせずにすむよう、行政と民間が一体となって情報発信、ルールづくりに知恵を絞るべきだ。

(文=山田稔/ジャーナリスト)

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