日本がTPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加するための条件として、米国政府から要求された非関税障壁に関する日米二国間交渉は、10月のTPP大筋合意と同時に決着し、「保険等の非関税措置に関する日米並行交渉に係る書簡(概要)」が発表されました。そのなかで「未指定の国際汎用添加物について、原則として概ね1年以内に我が国の食品添加物として認めることを完了することとした2012年の閣議決定を誠実に実施する」ことが盛り込まれたが、これには重大な問題が含まれている。
02年6月、中国製の鯖の加工品などに未指定のフェロシアン化物が使用されているとの照会があり、食品業界において回収騒ぎなど重大な影響が懸念され、当時米国大使館などから早期解決の要請がなされた。
このフェロシアン化物は、食塩の固結防止のために諸外国で広範囲に使われていたため、政府は急遽、食品添加物指定をするとともに「米国及びEU諸国等で使用が広く認められていて、国際的に必要性が高いと考えられる添加物(国際汎用添加物)については、企業からの要請がなくとも、指定に向け、個別品目毎に安全性及び必要性を検討していく」との方針を決定。これにより、「食品添加物の使用は極力抑制すべし」という国会決議は投げ捨てられた。
未指定の国際汎用添加物は45品目あり、12年段階で15品目の評価作業が終了していないため、同年の「規制・制度改革に係る方針(閣議決定)」で「指定まで概ね1年程度を標準とする今後のロードマップを策定・公表し、処理する」ことが決められた。前述した日米二国間協議で指摘された閣議決定とは、このことを指す。
現在の未指定の国際汎用添加物は4品目であり、アルミノケイ酸ナトリウム(固結防止剤)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(固結防止剤)、カルミン(着色剤)、酸性リン酸アルミニウムナトリウム(膨張剤)である。この4品目の共通点は、アルミニウムを含有する食品添加物であるということである。
世界的に危険性の指摘
ここに大きな問題がある。実は06年のFAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)合同食品添加物専門家会議で、アルミニウムについて従来の摂取量基準7mg/kg体重/週以下の用量で生殖系および神経発達に影響を与えることが判明した。その後、水腎症などの泌尿器病変などの影響も判明し、11年に基準を2mg/kg体重/週にした。06年時点の28.5%の水準まで引き下げられたのである。コーデックス委員会やEUでも、アルミニウムを含有する添加物由来の摂取量を低減させるために食品添加物の基準見直しを進めている。