日本銀行は12月18日の金融政策決定会合で、新たに「『量的・質的金融緩和』を補完するための諸措置の導入」(以下、諸措置)を発表した。この発表を受け、日経平均株価は一時急騰したが、その後、市場が日銀の発表した諸措置の内容を理解し始めると、日経平均株価は大きく下落した。
市場では日銀の発表は予想外でサプライズだったことから、今回同様に予想外のタイミングで行われた昨年10月31日の追加金融緩和策(いわゆる黒田バズーカ2)を連想し、「黒田バズーカ3」と受け止めた。しかし、その諸措置の内容が金融緩和策にはほど遠かったことから、市場の熱は急激に冷めた。黒田バズーカ3は“不発”だっただけではなく、むしろ、日銀の金融緩和策が手詰まり状態にあることを露呈した格好だ。
午後0時50分、日銀が金融政策決定会合の結果を発表すると、「『量的・質的金融緩和』を補完するための諸措置の導入」の発表を見て、わずか5分後の午後0時55分には前日比515円高まで急騰した。しかし、市場が諸措置の内容を理解するに従い失望感が広がり、日経平均株価は値を下げ、大引け間際の午後2時59分、この日の安値となる前日比371円安に沈んだ。
諸措置の発表を受け、市場では当初「ETF(上場投資信託)に新たに年間約3000億円の買い入れ枠を設ける」という点に大きく反応した。しかし、「追加金融緩和策としては、3000億円はあまりにも“ショボイ”金額で、失望感が広がった」(証券関係者)という。確かに、3000億円の追加は黒田バズーカ2に比べれば、あまりにも少額の追加緩和であり、およそバズーカなどと呼べる代物ではない。しかし、問題は金額の多寡にあるのではなく、諸措置の内容とその裏側にある日銀の金融緩和の限界にある。
日銀の金融政策は限界
諸措置には、(1)設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業に対するサポート、(2)「量的・質的金融緩和」の円滑な遂行のための措置――という2つの大きな柱がある。
第1の柱である設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業に対するサポートでは、新たなETF買い入れ枠の設定、成長基盤強化支援資金供給の拡充、貸出支援基金等の延長――の3つが打ち出されている。
市場が大きく反応した新たなETF買い入れ枠の設定はここに盛り込まれているのだが、その発表文は、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業の株式を対象とするETFを買い入れる。(中略)新たな枠によるETF買い入れは、日銀が銀行保有株式の売却開始に伴う市場への影響を打ち消す観点から(略)16年4月から開始する」と述べている。