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六代目山口組「高山若頭体制」で徹底される情報統制…緩んでいた「菱のカーテン」再び強化

文=沖田臥竜/作家
六代目山口組「高山若頭体制」で徹底される情報統制…緩んでいた「菱のカーテン」再び強化の画像1
大阪府警に家宅捜索を受けた健竜会事務所

 2005年、五代目体制から六代目体制へと代替わりを果たし、山口組はそれまで以上に組織内部の情報に関する危機管理を徹底させてきた。特に、早い段階から情報収集や分析に長けていた弘道会が六代目山口組の中枢組織になったことで、その徹底ぶりにも拍車がかかったといえるのではないだろうか。

「名古屋方式ともいわれた、そうした厳格な管理体制が一部で反発を受け、後に六代目山口組が分裂する原因のひとつになります。ただ、一般社会でも情報の扱いは重要課題となってきているように、六代目山口組の組織運営は理に適っており、時代の先端を行っていた。だからこそ弘道会という組織は、激戦区だった中京地区を統一し、勢力を拡大させることができたのではないでしょうか」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)

 六代目体制発足後に、執行部の情報漏洩の防止を中心とした危機管理体制を強く印象づけたのが、9年前の2010年11月に起こった、六代目山口組・髙山清司若頭の恐喝容疑による逮捕だったと思われる。

 当時、筆者は二次団体の直参を務めながら三次団体の若頭を兼任しており、いうならば“枝の組員”に過ぎなかった。そうした立場で、六代目山口組総本部から出された通達を、所属する二次団体本部から伝達したのだが、その内容は以下のようなものであった。

 「本家若頭(髙山若頭)の逮捕について、あれこれ詮索したり、口に出したりしてはならない」

 その通達後、筆者の知り得る限り、髙山若頭の逮捕について、あれこれと噂する組員は一切いなかった。単純なことではあるが、本部からの通達ひとつで情報統制が取れたのだ。

 その後、髙山若頭が服役することになり、六代目山口組が分裂。SNSの普及ともあいまって、これまでは決して世間に出ることのなかった、「菱のカーテン」と評されるベールに包まれてきた山口組の内部情報や資料が、SNS上で拡散されることが目立つようになるのである。

 「分裂後、戦略として、メディアも含めたそうした情報操作を巧みに取り入れ、先手を取ったのが神戸山口組だったのではないでしょうか。なんせ、普段はヤクザ事情を報じない民放番組や一般紙までもが、内部から漏れ伝わる情報も交え、山口組の分裂を報じ続け、記事にしたほどだったのですから」(報道関係者)

 そして、今年10月の髙山若頭の出所。出所後まず髙山若頭が着手したのが、信賞必罰ともいえる組織改革であった。これによって、六代目山口組サイドの意識が大きく変わったように見てとれる。それを証明するかのように、神戸山口組サイドに対する攻撃が相次いだのだ。さらに、それだけではなかった。手綱を緩めることなく次に断行されたのが、情報漏洩の防止だったのである。

 先頃、六代目山口組サイドから、こんな主旨の伝達が回されたといわれている。要約すると、「写真等、破門状等、漏洩した組は処分対象とする」といったもので、現にその規律に違反したとして、直参組長が謹慎処分を受けたというのだ。

 「ある二次団体の組員が、他の二次団体の挨拶状を携帯電話で撮影し、それが流出してしまった。それによって、トップの組長が謹慎処分となったのだ。これで、内部情報流出に対する警戒感が組員の間で一気に高まった。本来の六代目山口組の姿に戻りつつあるといえるのではないか」(業界関係者)

山口組新報も住所録もいまだ流出せず

 こんな例もある。六代目山口組では4カ月に一度、「山口組新報」という機関紙を発行している。その機関紙は、山口組組員にしか閲覧できない規則があったのだが、それでも髙山若頭の服役中には、たびたびメディアで取り上げられることがあった。だが今回、11月に発行されたとみられる山口組新報は、一切外部に漏れていないというのだ。


「メディア関係者の間では、『六代目山口組総本部が使用制限を受けたことなどで、今回は発行されなかったのではないか』といわれていたんです。毎年、12月13日の会合で直系組長に配布される最新の山口組住所録も、今年は配られなかったと見られていました。しかし、関係者から漏れ伝わる話によれば、どうも山口組新報はすでに配布され、来年度の住所録も肩書きなどの変更があり、会合では配られなかったものの、その後、配られているという話です」(週刊誌記者)

 当サイトで何度か「山口組新報」を紹介してきた筆者も、今回は配布されなかったのだと思っていた。だが、流出しなかっただけで、実際には発行されたようなのである。それが事実であれば、六代目山口組の情報統制は、髙山若頭の出所後からすぐに行われ、すでに相当徹底されているといえるだろう。

 そうした中で、警察当局も動きを見せている。今月16日、大阪市西成区で、神戸山口組傘下である五代目山健組・六代目健竜会組員が、三代目弘道会系幹部組員を包丁で殺害しようとした容疑で逮捕された事件で、20日、大阪府警が神戸にある六代目健竜会事務所大々的な家宅捜索をかけたのである【参考記事「六代目山口組系組員を山健組が襲撃」】。その模様はメディアでも流されたほど、物々しいものだった。当局は、抗争に関連して、捜索や取り締まりを強化する姿勢を見せつけている。

 年の瀬も押し迫ってきたが、六代目山口組の分裂騒動は、年をまたぎつつ、大きく動き続けることになりそうだ。

(文=沖田臥竜/作家)

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

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