韓国ではここ数年、映画館観客動員数がウナギ登りだ。2015年の累計劇場映画観客数はなんと2億1729万4634人。公開された映画の本数は1202編で歴代最高となった。そんな韓国で「日本の映画の輸入量が激増している」という統計が公表され、メディアの注目を浴びている。資料を公開したのは、韓国で映像物の倫理性や公共性を審査する団体・映像物等級委員会。日本の映画倫理委員会(映倫)に近い団体だ。
その映像物等級委員会によれば、15年に韓国で等級分類(審査および登録)された映画および動画コンテンツの国別状況は、日本483編(28.8%)、米国422編(25.1%)、韓国367編(21.8%)、フランス74編(4.4%)、英国56編(3.3%)、中国36編(2.1%)などとなった。日本映画がアメリカ映画を抜いて1位の座に輝いたのは初めて。
さらに興味深いのは、その審査・登録された日本映画の“中身”だ。483編の内、青少年観覧不可となった作品は392編(81.1%)、前年齢観覧可34編(7.0%)、12歳以上観覧可32編(6.6%)、15歳以上観覧可22編(4.6%)、制限上映可3編(0.7%)となった。最後の制限上映可というのは、青少年が観覧できないだけではなく、一般の劇場でも放映できない代物を指す。
なぜ韓国では、これほどまでに日本映画の輸入量が増えているのだろうか。
映像物等級委員会で政策広報部長を務めるアン・ジファン氏は、調査結果を次のように分析している。
「審査・登録を受けた日本映画が史上最も多く、また青少年観覧不可の割合が80%以上に達するという事実は、日本の成人映画が大幅に増加したという意味。(中略)そのほとんどが、(劇場ではなく)付加市場を狙った成人向けコンテンツだ」
現在、韓国ではIPTV(インターネット・プロトコル・テレビジョン/IPネットワークを使用して映像を配信)、VOD(ビデオ・オン・デマンド/電子レンタルビデオ)、モバイルなどにおけるアダルトコンテンツ市場が拡大しているのだが、それと並行して、日本の成人映画の版権売買も拡大しているということになりそうだ。
ただし、ひとつ気になる点がある。統計の詳細を調べると、韓国側が日本の成人映画としているものの中には、アダルトビデオ(AV)も数多く含まれている。定義は曖昧で、成人映画とAVを一括りにしているようだ。
韓国では、日本産AVがネットなどを通じて違法に配信されることが多かった。しかし、昨年の動きを見る限り、正式なルートでも流通量は増加傾向にあるようだ。
なお、今年に入って韓国で正式に登録された日本の“アダルト映像作品”には、『調教志願 ある女子大生の告白』(主演:宮内つぐみ 霧島涼子、韓題『女子大生の新しい経験』)、『STAR CHILD』(主演:高木公介、有元由妃乃)などがある。
(取材・文=河鐘基)