総理を誉めるヨイショ横綱――。自民党内でひそかにこう呼ばれる2人の議員がいる。
東の横綱は世耕弘成参院幹事長だ。最近も3月6日付ロシア紙イズベスチヤに掲載されたインタビューで安倍晋三首相を持ち上げまくり、自民党総裁連続4選への期待を見せつけた。
「安倍首相はトランプ米大統領やロシアのプーチン大統領と良好な関係を築いている。世界が辞めることを許さない」
今年11月の米大統領選でトランプ大統領が再選される可能性にも言及し、「国際舞台でトランプ氏とオープンに話せる唯一の日本の政治家だ」と持ち上げた。
このインタビュー発言はすぐに日本でも報じられ、10日の記者会見でこれについて聞かれると、世耕氏は発言は個人的な見立てだと断ったうえで、「ロシアの新聞が日本に逆流することはないだろうと、リラックスした気持ちで話した」と説明していた。NTTで広報マンを務めたことから自民党内で誰よりも広報を知ると自負し、『プロフェッショナル広報戦略』(ゴマブックス)という著書まで出している世耕氏だけに、安倍首相の耳に入ることを計算してしゃべったのは想像に難くない。
自民党幹部の1人もこう言って失笑する。
「世耕さんは安倍さんの目の前でも、歯の浮くようなヨイショ発言をするので、みんな呆れていますよ」
自民党の役員会で、そんな場面が目撃されている。新型コロナウイルスの感染拡大対策として、安倍首相がトップダウンの“政治決断”で突如、要請した小中高校の一斉休校は、自民党内にも事前の根回しがなく、党内の評判は悪かった。その弁解もあるのか、安倍首相は「100年前のスペイン風邪で米国のセントルイス市が学校や集会、イベントを中止にしたことで、感染拡大を抑制できた」という話を、役員会の場でとくとくと語ったという。すると世耕氏はすかさず、「総理、そうですよ。それが大事。先手が大事なんです」と声を掛け、集まっている役員たちは口をアングリだった。
西の横綱
そして、西の横綱は茂木敏充外務大臣だ。自民党内でも有名な“オレ様”議員の茂木氏。念願の外相ポストをゲットして以降、さらに鼻息が荒く、「ポスト安倍」に向けての安倍首相へのアピールに余念がない。新型コロナウイルスによる感染が最初に拡大した中国・武漢から日本人を帰国させるためにチャーター機を派遣した一件では、「総理が決断し、私が中国サイドと交渉した結果、スピード派遣につながった」と党内や番記者などに触れ回っていたという。
国会ではこんなやりとりもあった。3月6日の衆院外務委員会で野党議員が安倍首相の掲げる「地球儀を俯瞰する外交」という言い方はおかしいと指摘。地球儀そのものが俯瞰図なので、正しい日本語は「地球を俯瞰する」だと質したところ、茂木氏は、「概念としては『地球』のほうが正しいかもしれない」と言いつつも、「こういうのはキャッチフレーズだから、地球儀と言うほうがビジュアル的に俯瞰している感じがする」と、首相をフォローしたのだった。
「茂木さんは竹下派。同派にはもう一人、加藤勝信厚生労働大臣という『ポスト安倍』候補がいて、茂木さんは加藤さんをライバル視している。今回の新型コロナウイルス対策では、厚労省がメインのため加藤さんの露出度は高いものの、初動の遅れや後手に回った対応で評判を落としている。茂木さんはますます安倍首相へのアピールに力が入っています」(自民党ベテラン議員)
新型コロナウイルスの感染拡大は、日本経済をガタガタにさせ、東京五輪の中止や延期が現実になろうというほど深刻になっているのに、自民党幹部や政権幹部は自分の“出世”しか眼中にないようだ。
(文=編集部)