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浜田和幸「日本人のサバイバルのために」

10年前から中国揚子江のコロナウイルス汚染水、日本海に流入していた可能性

文=浜田和幸/国際政治経済学者
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新型ウイルス肺炎が世界で流行 中国がカンボジアに医療チーム派遣(写真:AFP/アフロ)

 中国武漢発の新型コロナウイルスが猛威を振るっている。感染者も死者の発生も収まる兆しが見えない。当初、発生源は海鮮市場で売られていた野生のコウモリやヘビではないかともいわれていたが、特定には至っていないようだ。武漢といえば揚子江で獲れる魚介類を扱う最大の拠点である。ところが、上流に建設された三峡ダムによって水流や堆積物が変化し、近年、多くの魚に異常が見られるようになった。

 2010年以降、揚子江(長江)産の魚介類をさばいたり、食した人たちが次々に体調不良を訴え、病院で検査を受けたところ、何とコロナウイルスが検出されたのである。そのため、中国政府は揚子江で捕獲された魚介類350種の販売を禁止した。しかし、問題の海鮮市場ではそうした危険な魚や病原菌で汚染された水槽を相変わらず平気で使用していたようだ。

 要は、野生の動物の肉だけではなく、魚や水自体にも危険が潜んでいるというわけだ。いうまでもなく揚子江の水は東シナ海に注ぎ込み、太平洋にも日本海にもつながっている。中国は東日本大震災で発生した放射能汚染水が太平洋に流れ出ているため、日本近海で獲れた魚は危険性が高いので輸入しないといまだに厳しい制限を課している。しかし、中国国内の汚染水については対策を怠っているようだ。確かに、中国政府は揚子江の流域6300キロで捕獲される魚介類の販売を禁止しているが、その発生源となる三峡ダムの環境問題には正面から向き合おうとしていない。

 地球温暖化による水面の上昇や海洋プラスティック問題など、海の環境は悪化する一途をたどっている。昨年末の米「タイム」誌の表紙を飾ったグレタ・トゥーンベリさんはスウェーデン生まれの17歳。環境問題への対策を求めてダボス会議や国連の気候変動会議で演説を繰り返している。まさに「環境保護活動のスーパースター」的な存在で、その行動力や発言力は通常の17歳をはるかに上回る説得力を備えている。世界を駆け回り、環境問題の深刻さと待ったなしの対策を訴えている。移動には飛行機を使わず、列車と船に頼るという徹底ぶりである。そんな海を旅する彼女にとって「海や河川の汚染」は緊急の課題となっている。

 トランプ大統領は自分が狙っていた「タイム」誌の「1年の顔」を彼女に持っていかれたこともあってか、自身のツイッターで「グレタは自分の怒りっぽい性格を直すことに専念すべきだ。友達と楽しい映画を見に行くように勧めたい」と頓珍漢なコメントを載せている。「地球温暖化はフェークニュースだ」と公言する大統領にとって、環境問題は関心の領域ではないようだ。

 そんなトランプ大統領であるが、弾劾裁判で無罪が得られたことに気をよくしたのか、「新型コロナウイルスの対策に役立てるように、中国に1億ドルを援助したい」と申し出た。その上で、「原因を究明するため、アメリカの専門家を中国に派遣する用意がある」とも述べている。ただ、その真意は別のところにあるとも見られている。なぜなら、武漢にある感染症研究センターは生物化学兵器の研究拠点とも目されており、アメリカの国防省からすれば、「喉から手が出るほど欲しい情報の山」が隠されていると認識されているからだ。当然ながら、中国政府はアメリカの申し出を断っている。

「海洋資源大国」の新たな船出

 翻って、わが日本は周囲を海に囲まれた島国であるため、外国からの病原菌からは比較的守られてきた。もちろん、渡り鳥や黄砂が運んでくる病原菌を完全に遮断することはできない。しかし、海洋国家であるがゆえに、「さかなクン」ではないが、魚介類の生態や海洋生物の病気についての研究は世界でも高い評価を得ている。そうした知見や研究成果をもっと積極的に活用すべき時であろう。

 わが国は国土面積の大きさで言えば、世界第66位の38万平方キロメートルにすぎない。しかし、排他的経済水域という視点で見れば、日本の海域面積は国土の約10倍に当たる405万平方キロメートルにも達する。これは世界第6位の「海洋大国」であることを意味している。「資源小国」といわれて久しいが、危機をチャンスに変える意味でも、ここらで視点や発想を大きく転換させる時ではないか。令和という新時代は「海洋資源大国」の新たな船出を待っている。

 わが国は現在、2011年の東日本大震災が引き起こした原発事故の影響もあり、深刻なエネルギー危機ともいえる厳しい状況にある。代替エネルギー源として石油、石炭、天然ガスなどの輸入を拡大せざるを得ないが、エネルギー価格の高騰は日本企業の国際競争力を弱めている。中国で発生した新型コロナウイルスによってサプライチェーンが寸断され、日本企業の多くの製造計画に支障が生じつつある。

 しかも、日本がエネルギーを依存する中東情勢は緊迫化する一方だ。2020年年明け早々にはアメリカがイランの国民的英雄と目される革命防衛隊のスレイマニ司令官を空爆で殺害したため、報復を叫ぶイランとの間でいつ戦争が勃発してもおかしくない状況。海上自衛隊が調査研究目的で現地に派遣されているが、エネルギーの安定供給に欠かせないシーレーンにもいつ危機が押し寄せるかわからない。

 安倍首相は新年初の年頭記者会見で、「アメリカとイランの和平に向けた仲介役を果たしたい」との希望を明らかにしたが、その実現は難しい。そうした状況のなかで、日本政府はエネルギー政策を白紙から見直す必要に迫られている。

「物質循環」に価値を見いだすライフスタイル

 一方、視野を世界に広げれば、地球環境問題の解決に向けての取り組みも避けては通れない情勢だ。要は、世界的なエネルギー問題や食糧問題等が人類共通の課題として我々の前途に大きく立ちはだかっているのである。「リング・オブ・ファイアー」といわれるように、世界各地で火山噴火や巨大な地震、津波など自然災害の嵐が吹き荒れている。途上国を中心に人口爆発は収まらず、食糧や水の奪い合いも日常化するようになった。

 こうした問題を創造的な観点から解決し、国際社会の安定化に貢献するためにも、海洋資源を最大限に活用することは、わが国にとって当然、目指すべき方向性といえるだろう。わが国には、長い歴史を通じて養ってきた「海と共に生きる」知恵と高い技術力が備わっている。日本人独自の経験と未来を切り開く技術的なアイディアを組み合わせ、人類すべてに対し、「海からの贈り物」を提供することが持続的な経済社会発展の基本となるに違いない。

 なぜなら、「海と太陽の恵み」から、人類は自らの生存にとって欠かせないあらゆるものを生み出すことができるからだ。であるならば、我々はこれまで培ってきた自然界との調和を重視する生き様、そしていわゆる「物質循環」に価値を見いだすライフスタイルを、これからの時代のビジネスモデルとなるように進化させねばならない。次世代に資源をバトンタッチするためにも、無限に近いエネルギーを秘めた海洋と太陽の力を活用しない手はない。再生可能エネルギーとしては、太陽光や風力を源とする発電は急速に利用が進んでいるが、海洋資源の活用はこれからだ。

藻類のパワー

 では、具体的な「海からの贈り物」として、注目すべき価値の源泉とはなんであろうか。一般的には、海洋資源として認知度が高いのは石油、天然ガス、メタンハイドレート等である。しかし、これらの海底資源の開発には莫大な資金と国際的な争奪戦という高いハードルが横たわっている。

 その点、日本にとって今後の循環型エネルギー社会の構築を模索する上で極めて有望と思われる海洋資源の一つは“藻類”である。というのも、地球上に存在するあらゆる創生物は藻類が行う光合成によって二酸化炭素を資源として固定化することで得られるからだ。言い換えれば、こうした過程で誕生する資源は「永遠に涸れることのない資源」にほかならない。その意味では、物質循環の象徴的な存在といえるだろう。

 現在、各国でさまざまな研究開発が進められているが、今後、実用化、産業化が期待できる分野としては、次のような可能性が指摘されている。

 すなわち、藻類を原料としたバイオ燃料等、エネルギー資源、あるいはバイオケミカル資源としての活用である。そして、藻類に凝縮されたレアアースの回収や医薬品への活用など高付加価値資源化の可能性も無視できない。また、藻類そのものを食糧、飼料、肥料として活用する方法も研究が進む。

 ほんの一例だが、ロシアの極東方面ではそれまで廃棄物として見向きもされなかったワカメが健康にプラスということで、ロシア人の大好物であるチョコレートに混ぜた新商品が誕生し、人気を博している。これは日本人の発想からヒントを得たものである。加えて、海洋環境の悪化傾向に対して、藻類の持つ浄化作用を活かした水産資源の保護、育成活動への応用なども検討されている。

 さらに、最近注目を集めているのは、フコイダンである。これはコンブ、ワカメ、モズクなどの粘質物に多く含まれる食物繊維で、1996年の日本癌学会で制がん作用が報告されたため、健康食品として一躍脚光を浴びるようになった。いまだ、科学的、臨床的なデータは限られているようだが、この「海からの恵み」フコイダンには「肝機能を改善する」「血圧の上昇を抑える」「抗菌作用がある」「アレルギー体質を改善できる」「コレステロールを下げる」などの効果も期待が高いところである。

 要は、藻類一つをとっても実に多様な可能性を秘めた創生物であるということだ。このような藻類パワーを活かした新産業の育成は単にエネルギー産業や資源の有効活用にとどまらず、わが国が世界に誇る高い技術力の蓄積を持つ農業や水産業、そして医療の分野と融合させることで、これまでにない海洋産業として大きな雇用を生み出す源泉となる。世界がパンデミックの恐怖に飲み込まれようとしているなか、日本の持つ海洋資源研究のノウハウを駆使することで、中国の揚子江の汚染対策そして海産物の安全確保につなげる道が開かれる。

実用性の高い海洋資源戦略

 こうした発想で海洋資源の利用範囲を広げていくことは「海洋国家・日本」にとって極めて重要な意味を持つに違いない。わが国にとって幸いなことに、洋上風力発電や海洋温度差発電、あるいは潮流発電等から得られる自然エネルギー源と組み合わせれば、より実用性の高い海洋資源戦略の要(かなめ)となるはずだ。

 近年、世界各国の研究機関や企業は二酸化炭素の削減技術や固定化技術の開発にしのぎを削っている。これまでも藻類を活用した二酸化炭素の固定化や藻類バイオマスの研究開発も推進されてはいるが、残念ながら生産効率や製造コストの面において大きな課題が未解決であり、いまだ本格的な事業化には至っていない。わが国の将来にとって、自然界との調和や物質循環を基盤とする社会を目指すというのであれば、この分野にこそ資源、人材、資金を投入する価値があるというものだ。

 景気の停滞が続く日本にとって、新たな活路を見いだす上で、「海洋大国」という立地条件を冷静に分析し、あらゆる海洋資源の有効活用を官民挙げて追求することが絶対的条件となるだろう。再度指摘しておくが、地球の持つ自然エネルギーのなかで、最も高い潜在力がありながら、未開発のままなのが「海からの贈り物」である。これこそ日本の宝といっても過言ではない。

 このお宝を味方につけるためには、日本近海において効率よく藻類からエネルギーを生産する研究開発体制はもちろん、それ以外の海洋エネルギーとの融合(ベストミックス)のあり方を見極め、全体的なシステムマネジメントの発想で臨む必要がある。でなければ、宝の持ち腐れになってしまう。

 とにかく、海洋エネルギーを活用した次世代発電計画も進行中である。これなどは風力や太陽光発電を上回る豊富な電力を生み出す可能性があり、IHI、東芝、東京大学、三井物産戦略研究所による共同研究が実施されている。

 日本近海を流れる黒潮は世界有数の流れの速さで知られる。言い換えれば、膨大なエネルギーの宝庫だ。現在計画中の発電機の容量は2000キロワット。これを2000基設置すれば400万キロワットの発電が可能となり、原発4基分の発電量に相当する。この技術が確立すれば、世界中の強い海流域での導入が促進され、まさに「海洋技術大国」の海外貢献策として新時代を画することになるだろう。

 一方、こうした研究の成果を産業化に結び付けるには、バイオマス・エネルギーや洋上風力エネルギー、さらには潮流発電エネルギー等の海洋エネルギーを最も効率良く確保する仕掛けを構築すべきである。いわば、こうした多様な海洋エネルギー資源をベストミックスの状態で活用できるようにし、さらには海洋からの高付加価値資源を獲得するために大規模な洋上プラットホームが必要となるだろう。

 こうした洋上プラットホームは海洋地域における生産活動のための拠点にとどまらず、将来的には新しい漁場の開発や海洋環境の改善に役立つ海洋インフラ基地としての機能を備えたものが望ましい。なぜなら、わが国はこれまで、メガフロートの実用化を通じてさまざまな研究成果を蓄積してきているからだ。今後は、新しいタイプの「海洋イカダ」の実現を目指し、基礎研究から実証実験までの連続した開発プロセスを加速させる必要がある。

 それが実現すれば、領土、領海の保全や自主防衛という国防上の観点からも有効な対策の一助となるに違いない。離島の活性化にも有効な武器になるだろう。日本の総合的な安全保障や食糧の自給力を高める上でも検討に値しよう。

 さらに言えば、わが国は従来から養殖漁業が盛んであり、魚介類や海苔、コンブ、ワカメ等の藻類の養殖、加工技術は世界のトップレベルを保持している。こうした高い養殖、加工技術を擁する国内地域と海洋資源創生のためのプラットホーム構築を有機的に結び付けることにより、農林水産業の再生や新たな水産加工業を起こすことも可能となる。

 日本経済の活性化には、こうした地域の産業基盤の強化にエンジンを組み入れる必要があるということだ。いわば、日本全体の再起動のためにも、新たな雇用を生み出すきっかけにするためにも、「海からの贈り物」を再認識することがスタート地点に立つことになる。

 こうした海洋資源創生エネルギーと高付加価値海洋資源を組み合わせたスマートコミュニティー構想こそが、陸と海、そして空が一体化する新しい「海洋国家・日本」に相応しい産業構造のあり方に発展するに違いない。今こそ日本社会の閉そく感を打ち破り、洋々たる成長産業の大海に船出するために、海洋大国の潜在資源に命を吹き込む時である。我々人類が誕生したといわれる海。青い地球と言われる所以の海洋。そんな「海からの贈り物」に感謝しつつ、その資源力の活用に大いなる知恵を働かせようではないか。

(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

浜田和幸/国際政治経済学者

浜田和幸/国際政治経済学者

国際政治経済学者。前参議院議員、元総務大臣・外務大臣政務官。2020東京オリンピック招致委員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士

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