家族旅行の最中に「会議」が行われたのか
今回の調査報告で注視すべきは、「不適切な支出」の部分だ。
舛添氏が、2015年と16年の正月に2泊3日で千葉県木更津市のホテルに家族で宿泊し、それを「会議費」として政治資金報告書に記載している件について、調査報告書は次のようにまとめている。
・舛添氏は今後の政治活動について、出版会社社長(元新聞記者)と数時間会談した。
・政治活動に無関係とまではいえない。しかし、全体としてみれば家族旅行と理解するほかなく、政治資金を使ったことが適切であったと認めることはできない。
つまり、会議をしているので違法ではないが、概要としては家族旅行なので不適切と結論づけているのだ。
だが、これには検事をはじめ法曹関係者から疑問の声が沸きあがっている。複数の法曹関係者に聞いたところ、次のような指摘があった。
「『出版会社社長』とは誰なのか。佐々木氏は、その人物と面会もせずに『会談が行われた』と判断したのはなぜか。裏取りをせずに『違法ではない』と断言した理由が不明瞭だ」
「通常、第三者委員会などで調査する際には、検察の手法と同様に書類の精査をする人と裏づけを確認に動く人に分かれるが、今回は裏取りに動く人がいなかったというのはおかしい」
「舛添氏が語った言葉を鵜呑みにし、まったく調査していない印象を受ける。検察的な調査ではなく、弁護するために雇われたといえる。数々の疑惑のなかで唯一、違法性を問えるのは、このホテルでの会議費に関する項目。仮に会議が行われていなかったとすれば、政治資金収支報告書虚偽記載の罪となり、5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金を科せられることになる」
この指摘の通り、法曹関係者や議員たちが注目しているのは、ホテルで会議が行われたか否かだ。仮に、会議が行われていなかったとなれば、舛添氏は窮地に追い込まれる。佐々木弁護士が、会議をしたという相手方に面会すらしなかったのは、この疑惑を深く追求することを避けたようにもみえる。
かつて検察の仲間から「マムシの善三」とアダ名を付けられた佐々木弁護士が、裏取りをしなかったのはなぜなのか。
舛添氏が知事を続投するためには、説明を避けて通れないポイントだ。
(文=平沼健/ジャーナリスト)