英語とWi-Fi環境――。日本を訪れた外国人観光客が感じる、2大不満だ。いまや、訪日外国人観光客数は、年間2000万人を上回ろうとしている。日本の総人口の6分の1に相当する外国人が、毎年日本を訪れることになる。十数年前までは想像もできなかったような光景だ。
そんな日本にインバウンド需要を奪われまいと、総力を挙げて発奮する国がある。それは、隣国・韓国だ。ソウル市は2018年までに、外国人観光客2000万人を誘致するという目標を立てている。18年というのは、平昌オリンピックが開催される年だ。一方、2000万人という数字は、何がなんでも日本には負けたくないという意思の表れなのかもしれない。
6月16日にソウル研究院が「ソウル市基礎観光環境の実態監視報告書」を発刊した。同報告書は、昨年5月から6月にかけて外国人観光客300人を対象にインタビューを行ってまとめたもので、そのなかには韓国を訪問した外国人観光客の不満も集計されていた。
不満として特に多く挙げられていたのは、一般的な交通手段であるバス、地下鉄、タクシーの利便性、またそれらの運行にかかわる人々のホスピタリティだ。
「(地下鉄の放送案内は)中国語の発音が不正確。駅名も漢字を韓国語のまま発音するので聞き取りにくい」(中国人男性・30代)
市内を走る路線バスに関しては、バス停で待っていても無視して通り過ぎたり、運転手が信号を守らないなど危険運転を行っていたという指摘があった。さらに、タクシーではコミュニケーションの難しさや不法行為、不親切が不満として集計された。
このなかで、もっともひどいのはタクシーだ。報告書によると、荷物を多く抱えているというだけで乗車拒否をするなど、不親切な事例が指摘されている。
「韓国に行くと、運転手に目的地を伝えるのが難しい。料金をぼったくられたこともあるし、運転中に電話したり、スピードを出しすぎて怖い」(カナダ人女性・20代)
「『仁川空港に向かうバスのターミナルまで行ってくれ』と伝えたが、運転手が錯覚して仁川空港に向かってタクシーを走らせた。途中で間違いに気付いた運転手が、『降りろ』と言い、無理やり放り出されてしまった」(中国人女性・20代)
ソウル研究院の関係者は「08年の調査時と比較すると、多くの要素が改善された。ただ、まだ多くの不便や不満が指摘されている。(中略)今後さらに増える観光客を勘案すると、早急に改善しなければならない」と提言している。
国内経済が停滞を続けるなか、外国からの観光客に商機を求める日韓両国。今後、どちらの国が先に外国人の不満を解消し、観光地としての人気をさらに得ていくのだろうか。
(取材・文=河鐘基)