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料理本など中古本大量購入のツタヤ図書館に年3億税金投入!市が危機感で6千冊追加購入

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
料理本など中古本大量購入のツタヤ図書館に年3億税金投入!市が危機感で6千冊追加購入の画像1見た目はオシャレだが、中古本だらけのツタヤ図書館(「多賀城市立図書館 HP」より)

 レンタル大手TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する「ツタヤ図書館」は、佐賀県武雄市図書館、神奈川県海老名市立中央図書館に続き3月21日にオープンした宮城県多賀城市立図書館で全国に3館となった。

 その多賀城市立図書館では、リニューアルに際して3万5000冊に上る大量の蔵書を追加購入したが、その選書リストを見てみると、大きな問題をはらんでいた。

 当サイトでは、その不可解な選書をたびたび報じてきたが、CCCの選書は極端に価値の低い古本が多く、それも購入ジャンルも料理本や旅行本といった実用書に偏っているという不可解さがあった。

 そのような不可解な選書は、武雄市図書館、海老名市立中央図書館でも起きていたことが発覚し、いずれも住民から厳しく追及されている。

 武雄市と海老名市のツタヤ図書館で不祥事が次々に明らかになるなか、開館準備を進めていた多賀城市では、市教育委員会がCCCに対する態度を強めていたことがわかった。

 それまでCCCの選書に沿って蔵書の購入を進めていた市教委が、世論の激しいCCCバッシングをみて、選書リストの4分の1に上る図書を受入拒否し、さらに中古本の購入について改善を図ろうとしていたようだ。

 市教委が、自らの権限を見せつけるような決定的な出来事が起きた。

 それは、CCCの選書リストそのものを拒絶して、市教委自らが選書リストを作成したのだ。CCCには、有無をいわさず「これを購入せよ」と命令した。それが第4回リストである。

 下のリストを見てほしい。第3回までとは明らかに異なる書式である(過去のリストは6月4日付当サイト記事『ツタヤ図書館、古本を法外な高値で大量購入!市は適正価格確認せずCCCの言い値で購入』参照)。

料理本など中古本大量購入のツタヤ図書館に年3億税金投入!市が危機感で6千冊追加購入の画像2

 筆者は、選書リストを入手した後、市教委の担当者に第4回リストについて確認した。すると、CCC提案なしで市教委が出した購入指示であること、そして中古書店(ネットオフ等)ではなく、すべて図書館流通センター(TRC)から新刊で購入するよう命じたことを明確に認めた。

 興味深いのは、第4回のリストの中身である。第3回までの「巻次」「著者」「出版社」「ジャンル」の書式は踏襲せず、「タイトル」と「TRC/ISBNコード」「数量」しかない。第3回までと同様に、価格欄もない。

 リストアップ時点では第3回までに30冊程度しかなかった児童書を一気に533冊、同じく郷土資料も200冊だったが第4回だけで626冊も購入を指示していることが判明した。

 それまでのCCC選書に決定的に欠けていた、これらのジャンルを新刊で補完するとともに、全体に占める中古本の割合を大きく下げたのである。CCCが見積もりで提案した中古本は当初1万7500冊であったが、最終的にリストアップされたのは1万3000冊となった。

市教委が密かに蔵書を追加購入

 多賀城市立図書館の選書にまつわるCCCと市教委との主導権争いは、単に中古本を減らして新刊を増やすだけでは終わらなかった。

 多賀城市立図書館がオープンを迎えた3月21日のことである。「東京の図書館をもっとよくする会」の池沢昇氏からこんな連絡が入った。

「CCCがどんな選書を行っているかを調べるために、宮城県の図書館横断検索を使って、過去3年間のベストセラーと受賞作品を60冊ピックアップして調べたところ、そのほとんどが購入されていました」

 3万5000冊の選書リストには、いわゆる「売れ筋」の本はほとんどなかった。しかし、ツタヤ図書館は、オープンまでに購入していたということか。

 その謎を解くカギは「旧図書館」にあった。池沢氏によれば、新図書館のための追加蔵書は、新装開館までは蔵書目録に掲載されず、その後に登録されるという。つまり、新装開館前に購入・登録されている図書は、昨年度の旧図書館で日常的な運営業務の一貫として処理されていたものだった。

 調べてみると、昨年11月で閉館された旧図書館でも、図書整備の年間予算はついていた。その額は、実動8カ月にもかかわらず、前年と同じ1300万円も計上されていた。

 しかも、旧図書館における昨年度の購入図書の月別受け入れ決定数を問い合わせてみると、閉館していたはずの12月に393冊、今年1月に759冊、2月に476冊、3月にも350冊と、新図書館用に次々と購入しては登録されていったことがわかった。トータルでは、なんと6203冊も購入されていたのだ。そのほとんどが2014~2016年刊行のもので、すべてについて価格もしっかり明示されている。いわば、ごく一般的な図書館の選書だ。

 このようにして、市教委は密かに市民の求めるであろう蔵書を購入していたのだ。

「市民が求める図書が追加購入されていたとはいえ、新図書館の運営者がほとんど役に立たない本を手当たり次第に購入したという、『不適切な行為』が許されるわけではない」と池沢氏は指摘する。

 例えていえば、ブランドの新米に古い米や他産地の米が混入しているようなものだろう。そのような混入米は、全体の価値を大きく損なうことになる。

 CCCは、古本を大量に仕入れることで蔵書を増やし、見た目だけ立派な図書館をつくろうとしたが、市教委がギリギリのところで図書館の崩壊を免れさせた。だが、多賀城市は開館準備作業だけで年間2億1000万円もの費用をかけ、開館後には毎年、直営時代の管理費の2.3倍にあたる2億8000万円の指定管理料を今後5年間にわたってCCCに払い続けなければならない。

 地元メディアはツタヤ図書館を賞賛する記事であふれているが、多賀城市民は実態を把握しているのだろうか。

 なお、筆者は一連の記事を書くにあたって、多賀城市に対して追加蔵書の納入企業一覧と、それら企業別に確定した購入金額の内訳を開示請求していたが、6月13日付で同市から「不存在」との決定文書が送られてきたことを報告しておきたい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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