ついに、一連の検察定年延長問題に大きなくさびが撃ち込まれた。時事通信は21日、記事『黒川検事長が辞任へ 緊急事態下、賭けマージャン報道―政権に打撃、定年延長で渦中』を配信し、東京高検の黒川弘務検事長(63)が辞任する意向を固めたことを報じた。事の発端は文春オンライン(文藝春秋)での報道だった。黒川検事長とマージャンに興じていたのは朝日新聞社員1人と産経新聞2人という。本来であれば文春のようなスクープを報道しなければならない記者らが、疑惑の人物と一網打尽にゴシップを書かれるという大失態に、新聞関係者は頭を抱えているようだ。
大手紙デスク「昔は一晩で10万円くらい巻き上げた」
複数の全国紙記者や地方紙東京勤務記者らの話によると、今回、黒川検事長と賭け麻雀に興じていたのは産経新聞社会部の司法担当記者と元司法キャップ記者、元検察担当記者で朝日新聞社経営企画室勤務の社員の3人だという。全国紙の20代男性記者は今回の件を受けて、次のように話す。
「今でも各県の県警記者クラブに雀卓が残っているところも多いくらい、40代半ばから50代以降のベテラン記者や警察官、検察官はとにかくマージャンが好きです。社内規則では表向き、賭けマージャンは厳禁なのですが、今回の事例のように、取材先とやっている人はまだまだいます。
うちの会社のキャップ、デスクたちも何かにつけて『昔はよくサツ官(警察官)や次席(地検の次席検事)と朝まで飲みながら、マージャンをやったものだ。次席から一晩で10万円くらい巻き上げた時は最高だった。いい時代だった』とか昔を振り返っています。検事から巻き上げたのは税金ではとか、賭けマージャンは違法ですなんて、とてもじゃないけど言えませんよ」
女性記者「セクハラ・パワハラの温床」
別の社の元社会部女性記者は次のように話す。
「黒川さんのマージャン好きは検察庁と絡んだことのある記者はみんな知っていますよ。多くの記者が誘われています。
黒川さんみたいな検察官はさすがに聞いたことがありませんが、警察幹部や編集幹部は女性がマージャンを知っているとすぐ家に呼んできます。取材にかこつけてお酒も入っていますし、そういう時にセクハラめいた言動をしてくる人もいます。セクハラ・パワハラの温床です。正直、若手の女性はみんな嫌がっていますよ」
朝日新聞関係者「役員ら頭を抱えている」
今回、賭けマージャンに参加した社員がいたことが発覚した朝日新聞関係者は次のように頭を抱える。
「今回渦中の人物は経営部門のそれなりのポストにいます。本来であれば、社を代表してコンプライアンスを守らなければならない立場です。だから、事態の大きさに役員らは頭を抱えていますよ。
一般的に記者職から経営職に回るのは、社会部出身の人間ほど『不名誉』と感じることが多いです。『いつか報道の現場に復帰する』という思いで、黒川さんのマージャンの誘いに乗ったのかもしれません。そういう気持ちを推し測っているのか、社内のいわゆる無頼派を自任する幹部たちの間には『この程度の食い込み方は記者ならやって当たり前だろ。検察官が違法を行うのと記者が違法を行うのは違う』という意見もあります。ただ、今はそういう時代ではないのですが」
黒川検事長に法曹人としての資質がないことが明らかになったのは確かだ。同様に、マスコミの旧態依然とした取材手法もまた大きな問題をはらんでいることがわかった。