他人に厳しく自分に甘い
さらに、他人に厳しく自分に甘い発言で批判も高まっている。舛添要一前都知事が失脚するきっかけとなった高額の出張費に関し、増田氏も批判的立場だった。だが、増田氏も県知事時代に飛行機に乗る際はファーストクラスを利用していた。
加えて、舛添氏が毎週末に神奈川県湯河原の別荘に公用車で行っていたことについても、「毎週末は多すぎる。公私をきちんと峻別し、公用車の使用も控えるべきだ。(危機管理の面でも)知事がすぐに登庁できない確率が高まる」と問題視していた。
だが、増田氏は県知事時代、議会での答弁で自身の年間の出張日数について、「県外出張が81日、県内出張が66日、それから海外出張が24日」と明かしている。つまり、1年のうち171日も出張で不在だった。舛添氏に対しては、危機管理のために不在の日を減らすべきと述べながら、自身はこれだけ不在にしていたのだ。
政策の面でも、不透明な部分がある。県知事時代に増田氏は、韓国人をはじめとした外国人に地方参政権を認めるべきとの見解を述べている。これについて記者から「東京都知事選挙立候補にあたって見直すのか」と問われた際、「東京都知事として、地域の声を聴いて東京都としての在り方を慎重に考えていく」と回答し、明確な立場は示さなかった。
自民党は外国人参政権に断固反対との立場であるため、党との政策のずれをどのように考えているのかについて説明が求められる。
東京電力との深いつながり
増田氏に関して評判が悪いのは、このような言行不一致だけが原因ではない。東京電力との関係性に疑問を持たれているのだ。増田氏は2010年11月に 内閣府原子力委員会新大綱策定会議構成員に就任し、福島第一原子力発電所事故発生後、被害者への損害賠償や廃炉を支援する「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」の運営委員を務めた。そしてその後、東電の社外取締役となった。東電は告示の前日である13日に、増田氏は7月8日付で辞任したと公表した。
東京都庁をはじめとして東京都の公共施設は、東日本大震災の翌年から東京ガスなどの新電力から電力の供給を増やし、コスト削減を図ってきた。東電との関係が深い増田氏が電力問題についてどのように取り組むのかも注目すべき点だ。
蛇足だが、かつて増田氏は「日韓グリッド接続構想」を提唱している。これは、海底ケーブルによって、韓国に電気を直流送電するというものだ。増田氏は、エネルギー問題には特に造詣が深いのかもしれない。
(文=平沼健/ジャーナリスト)