逆に、「鮮度が命」ともいえる生活・実用書は、むしろ中古ではなく新刊で揃えるべき類いだ。刊行から何年も経過していれば、時代に合わない情報が掲載されていることも多く、利用者のニーズに合わない。その上、購入してから短期間で除籍・廃棄しなければならなくなるため、コストパフォーマンスは悪い。
だが、CCCは「人文」「児童書」「アート」を新刊本で大量に購入し、実用書は中古本での購入が多かった。これは、単に入手しやすさを最優先したと考えられる。CCCは、まず中古本を大量に購入し、その後に新刊本で補うような手順を踏んでいる。
すぐに情報が古くなる生活・実用書は中古本市場において流通量が多く、比較的短期間で大量の本を調達しやすい。逆に「人文」等は限られた在庫しかない。特に中古の「児童書」は、図書館で購入できるほど状態がいい本は極端に少ないという事情がある。
「アート」本、異常な大量購入の謎
さらに、もうひとつ不可解なのは、「アート」が第3位に入るほど大量に購入されていることだ。
15年4月10日付の「多賀城市立図書館資料購入(移転準備作業)選定方針」において、重点的に選定すべき資料として挙げられているのは、「料理」「旅行」「実用書」「児童書」「歴史・郷土」の5分野である。
重点的に選定する資料ではないにもかかわらず、CCC独自の判断によって新刊で大量に選書されている理由を検討してみよう。
まず、「アート」というジャンル分けの曖昧さが挙げられる。一般的に「アート」といえば、絵画・彫刻をはじめとした美術関係の画集・解説書や、クラシック音楽、写真集、前衛的なデザインなどをイメージするが、「ライフスタイル分類」では必ずしもそれらだけではない。
映画、演劇、音楽、美術について書かれたものであれば、ほぼ無条件で「アート」に分類されている。伝統芸能、工芸、デザイン、芸術家の人物伝などもすべて含むのだ。したがって、エッセーやビジネス戦記などでも「アート」として分類されていることがある。
たとえば、自伝的経営書の『ゴジラで負けてスパイダーマンで勝つ わがソニー・ピクチャーズ再生記』(野副正行/新潮社)は、映画について書かれているため「アート」に分類されている。また、俳優・小沢昭一の自伝的講演録『小沢昭一 僕のハーモニカ昭和史』(小沢昭一/朝日新聞出版)も、音楽について書かれているから、やはり「アート」とされている。