こうしたCCC独自の分類によって、雑多な本が幅広く「アート」の対象となっているのだ。
これとは対照的に、市教委が重点的に選定する分野に指定している「歴史・郷土」が、たった1018冊しかない。新刊リストのうち5.3%である。中古本での選書を調べてみても、213冊(中古全体の1.6%)しかない。中古本・新刊本を合わせた場合は全体の3.8%だ。市が重点指定していない「アート」を大量選書する一方、重点指定した「歴史・郷土」が少ないのだ。
選定基準のなかで、「郷土・歴史コーナーは、史都多賀城として強化すべきコーナーのひとつ」として、多賀城に関連した郷土資料、東日本大震災を後世に伝えるための記録資料等を強調して列挙されている。それにもかかわらず、少なくとも冊数だけみれば、先に挙げられている市教委の方針にはそぐわない。
だが、市教委に問い合わせたところ、特に問題はないとの認識だ。
「郷土・資料については、選書基準から逸脱するほど少ないという認識はない。CCCと協議して、両者合意のもとで選書された図書を購入しているので、それで特に支障はなかった」(多賀城市教委・生涯学習課)
自治体直営の図書館長を長年務め、いくつもの図書館立ち上げを手掛けてきた経験を持つ「東京の図書館をもっとよくする会」代表の大澤正雄氏は、今回の選書リストを見た感想をこう述べる。
「今回のリストには、全般的に調査研究のための図書が少ないように思います。ある特定のテーマについて調べるとき、それに関する書籍と共に、解説書が必要です。基本図書は、優れた解説書がなければ生きません。たとえば、経済学では、ケインズ経済学、サムエルソン経済学などの基本図書と、さらに解説書を揃えるといった具合です。そのためには、出版社別にリストを取り寄せて、さらに利用者のニーズを考えながら、どの解説書がいいのかを調べることも重要です」
そもそもCCCに対して、公共図書館として本来の機能の充実を望むのは最初から無理があったのかもしれない。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)