9月1日の防災の日、11月5日の津波防災の日を中心に、この秋、全国各地でさまざまな防災訓練が行われた。沖縄県では5日の訓練に358団体、約2万8000人が参加。訪日外国人旅行客の急増を背景に、外国人被災者を想定した避難所設営の訓練には、多言語を話す支援サポーターなどが加わった。神奈川県茅ケ崎市では、市と内閣府の合同の避難訓練が行われ、砂浜で遊ぶサーファーや観光客らに津波到来の危険を伝え、避難所に誘導した。
今回、10月30日に都内の人口約14万人の市の防災訓練に参加してみた。朝9時の防災行政無線のサイレンを合図に、歩いて5分ほどのメイン会場の小学校に向かう。学校の校庭脇に数台の消防車、はしご車、警察車両などが待機。校庭には市の防災担当者や消防署員らの姿は多いが、肝心の一般市民は少ない。受付が始まり、片隅で市の防災担当者による説明が始まったが、聞いている市民は数十人。背広姿の国会議員が手持無沙汰といった感じでポツンと立っていた。
訓練の内容は、避難所開設、炊き出し、防災演習、介護必要者の避難所受け入れなど。高校生や大学生のボランティア、市民ボランティア、行政担当者らが熱心に取り組んでいた。しかし、一般市民は一連の訓練を遠巻きに見て、炊き出しでつくられた炊き込みごはんと缶詰などをお土産にもらって帰るだけだ。消火訓練、救護訓練など市民が参加できるような内容がまったくなかった。参加者にとっては、肩透かしを食らったような訓練内容だった。一般市民の参加者が集まらなくても、これでは無理からぬところだ。
防災訓練は消防や防災担当者らが実演を見せるだけの場ではないはずだ。いつ起きるかわからない震災に備えるためには、もっと市民参加型の実践的な訓練を何度も行わなければ、いざというときに役に立たないのではないのか。訓練内容の見直しの必要性を強く感じた。
巨大地震の想定はしていても備蓄などの取り組みは不十分
東日本大震災から5年以上たった。今年も4月の熊本地震、10月の鳥取地震が起きたほか、8月以降には迷走台風などが相次ぐなど、日本列島は大きな災害に見舞われた。この先も南海トラフ、首都圏直下型といった巨大地震の発生が想定されている。
こうしたなか、市民の防災意識はどうなっているのだろうか。