内閣府が5月に公表した「日常生活における防災に関する意識や活動についての調査結果」(2016年2月実施、回答者1万人)によると、災害発生の可能性について「ほぼ確実に発生すると思う」が16%、「発生する可能性は大きいと思う」が47%と、合わせて63%が災害発生を想定している。だが、実際の取り組みは不十分だ。「日常生活において、災害への備えは」との質問に「十分取り組んでいる」は3.4%、「できる範囲で取り組んでいる」が34.4%と、「取り組んでいる」人はトータルで37.8%にとどまった。
一方、「ほとんど取り組んでいない」は50.9%、「特に取り組んでいない」は11.3%と、合わせて6割以上が行動を起こしていないという現状が浮き彫りになった。
実際の取り組み内容についてはどうか。もっとも回答が多かったのが「携帯ラジオや懐中電灯、医薬品などを常備」で45.1%。以下、「食料や飲料水を備えている」は38.2%、「避難場所や避難経路を確認している」24.8%、「地震保険に加入している」24.4%、「家具などの落下防止対策を行っている」23.7%と続く。ラジオや医薬品常備という当たり前のことでさえ半数以下、大地震の際もっとも被害が多い「家具などの転倒落下による負傷」への備えは4分の1以下というのが実態なのである。
興味深いのは「今、あなたが住んでいる地域に、将来(今後30年程度)大地震、大水害などの大災害が発生すると思いますか」に対する回答だ。東北から首都圏、東海、京阪神、四国、九州の太平洋岸に接した地域の住民は70%以上が「可能性が高い」と答えている。南海トラフなどの情報がベースになっているのだろう。
逆に北海道、東北から九州にかけての日本海沿いの地域は「可能性が高い」は50%未満となっているが、ここには今年大きな地震があった熊本や鳥取も含まれている。調査実施時の2月の段階では、両県で大きな地震を想定している人々が少なかったということだ。
高齢化、単身世帯増加、消防団員の減少など課題は山積
大地震は避けられないと、頭ではわかっているが自分自身の備えには実行が伴わない――。そんな国民の防災意識、取り組みの姿が浮かび上がってくる。
冒頭で紹介した防災訓練への一般市民の参加の少なさも、訓練内容の魅力のなさだけでなく市民の防災意識がまだまだ低いということも一因だろう。