文科省天下り、早大と口裏合せの裏工作…人事課が経歴書作成、トップ辞任も退職金ガッポリ
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
もう「びっくり仰天」と言いたくなるような文部科学省の不祥事が発覚しました。文科省の前高等教育局長の吉田大輔氏が早稲田大学の教授に就任した際、省内から天下りのあっせんを受けたとされる問題です。これは、事務方のトップである文部科学事務次官の前川喜平氏の辞任にまで発展してしまいました。この問題については、与野党が追及の姿勢を崩していません。
政党として、松野博一文科大臣直轄の「再就職等問題調査班」がヒアリングを行う場に神澤も同席しましたが、ここでもびっくりしました。文科省の官僚に限った話ではないのですが、「国民感覚」とのギャップがありすぎるのです。
「高等教育」とは、高等専門学校・短大・大学・大学院などのことです。私学助成という、早大を含む私学に対する補助金の額の決定権を持つ局のトップだった人が、利害関係のあった早大に教授として再就職するなんて、誰が聞いても疑問に思うはずですが、文科省の人たちの認識は「ふーん」程度だったようです。こういう感覚だから、天下りはなくならないのでしょう。
裏工作のオンパレードだった今回の天下り
官僚の再就職(永田町や霞が関では「天下り」とは言いません)はしばしば問題になりますが、今回は特に悪質で稀なケースでした。
ご存じのように、国家公務員の再就職については、民間にはない服務上の義務がいろいろと課せられています。自分のポストと利害関係のあるところに再就職するのは、当然NGです。
吉田氏の場合、それを隠すために早大側と口裏合わせをしていたことや、在職中から求職活動をしていたことなどが発覚しています。神澤も、これまでいろいろな天下りを見てきましたが、これだけ裏工作がそろうケースは珍しいです。「さすがにあり得ないでしょ」というのが正直な感想です。
もちろん、文科省だけではなく早大にも問題があります。問題が発覚しそうになったとき、吉田氏が早大側と「想定問答」を作成し、口裏を合わせて内閣府再就職等監視委員会からの追及をかわそうとしたことについて、早大は記者会見で「自分たちは被害者だ」というニュアンスの発表をしていました。
法的には早大に罰則がないようですから、率先して調査班に情報を提供することで「被害者」という立場を強調する作戦に出たのだと思います。でも、口裏合わせをしていたのだから同罪です。「前高等教育局長を大学に受け入れることで、私学助成の補助金増額が見込める」という皮算用をしていたに違いありません。
また、吉田氏の再就職活動を文科省の人事課が手伝っていたことにも驚きました。人事課が吉田氏の経歴書をつくってあげた上、早大に提出していたそうです。せめて、経歴書くらい自分で作成することはできなかったのでしょうか。
委員会に出席していた議員が、その理由を問いただすと、驚きの回答が返ってきました。なんと、「(吉田氏は)パソコンの操作に不慣れだったようです」というものです。「吉田氏がものすごく威圧的な人で、人事課の職員も従わざるを得なかった」という返答を予想していたのですが、想像を絶する理由でした。そして、吉田氏は「違反行為とわかっていながら、人事課の職員に自分の経歴書を作成してもらっていた」のです。