10月18日に拙著『相剋 山口組分裂 激動の365日』(サイゾー刊)が出版される。
今から1年前、私は品川駅でテレビ局のカメラマンやリポーターと共に、ある人物が現れるのを早朝から待っていた。その人物とは、六代目山口組の最高指揮官として知られる髙山清司若頭だ。そう、この10月18日は、髙山若頭が府中刑務所から出所してきた日。私の目には、この時の髙山若頭の姿が、山口組分裂問題を終わらせるために満を持して、社会復帰してきたように映ったのであった。
現に、そこからの六代目山口組の動きは、一気に活性化していく。
まずは、内部に対しては、信賞必罰ともいえる組織改革を断行させてみせた。そのことで拍車がかかったのか、その後の六代目サイドによる神戸山口組への攻撃は、マシンガンを使用するなど、戦慄が走るようなものであった。一方で、その中核組織である三代目弘道会による、神戸山口組に対する切り崩しも加速していった。中でも髙山若頭の出所前に、三代目弘道会若頭である野内正博組長率いる野内組に移籍した権太会の組織拡大は、山口組の中でも抜きんでたものであり、一躍業界では注目の存在となったのだ。
そして、3つ目の山口組として、神戸山口組から割って出て誕生した任侠山口組は、今年に入ると、山口組の象徴ともいえる菱の代紋を下ろし、名称を絆會へと改名させた。また、神戸山口組においても、中核組織であった五代目山健組が離脱し、直系組長らが続々と神戸山口組を後にしたのである。その中には、“神戸山口組設立の立役者”といわれていた親分衆らも存在していたのだった。「大勢は決した」という声は日に日に強まっている。
こうしたすべては、髙山若頭が出所してから、この1年以内に起きている。そこからも、すべての山口組組員にとって、髙山若頭の存在がどれだけ大きく、強烈なものであったのか窺い知ることができるだろう。
六代目山口組分裂当時、誰しもが口にした言葉があった。
「髙山若頭が社会不在を余儀なくされていなかったら、山口組は割れていなかった……」
そして、同時にこうも囁かれていた。
「分裂問題は、髙山若頭が帰ってくれば、すべて終わる」
その言葉を裏付けるかのように、ときより抗争事件は起きるものの、どちらか有利ともいえず、膠着状態になっていた山口組分裂問題は、髙山若頭の出所後に大きく動くことになったのであった。
本書『相剋』はそうした1年、つまり髙山若頭の出所直前からの365日近い期間の中で、山口組ではいったい何が起きていたのか表裏を含めて、レポート式に追いかけている。
もちろん、こうした間にも状況は動いている。絆會の砦ともいえる長野県下で銃弾が飛び、同時に絆會随一の武闘派組織といわれていた四代目竹内組が、六代目山口組三代目弘道会へと移籍したのだ。そして、絆會のナンバー2である金澤成樹若頭は、竹内組組長を銃撃したとして、警察当局から手配される身となってしまったのだった。
繰り返しになるが、この一連の流れを生んだ背景も、多くの関係者が口にするように、髙山若頭の存在なしに語ることはできないだろう。
「髙山若頭が帰ってくれば、分裂問題は解決する」
まずは『相剋』を読んでいただければ、分裂騒動の行方を左右した相剋(攻防)の経緯、それらの裏側を知ってもらうことができるのではないだろうか。
(文=沖田臥竜/作家)
●『相剋 山口組分裂・激動の365日』
沖田臥竜・著/サイゾー・刊/定価1300円+税
2015年に勃発した山口組分裂騒動が大きく動いた!六代目山口組・髙山清司若頭が出所した昨秋から、神戸山口組内部が揺動し始めた今日までの1年間に何が起こってきたのか? 同問題を取材し続けてきた作家・沖田臥竜が独自の情報網から浮かび上がらせた、核心に踏み込むドキュメンタリー。
以下のサイトでは、著者のサイン本を特別販売中(10月14日まで)
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