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玉木宏主演『極主夫道』アニメ化はなぜいま発表された?激変するアニメ業界の悲しき事情

文=編集部
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日本テレビ系で放送中のドラマ『極主夫道』。主演・玉木宏の原作再現度が高いと話題にもなったが、原作にはない設定が賛否両論を呼んだ。(画像は日本テレビ公式サイトより)

 現在日本テレビ系で毎週日曜22時半から放送中のドラマ『極主夫道』のアニメ版が来春からNetflixで配信される……とのニュースが、アニメファンの間で話題となっている。実写版放送中におけるアニメ化発表という事態が、「実写版にケンカ売ってないか?」というのだ。

『極主夫道』は、ウェブコミックサイト「くらげバンチ」(新潮社)で連載中の同名マンガが原作。“伝説の極道”と呼ばれながらも結婚を機に“専業主夫”となった主人公・龍を玉木宏が熱演しており、そのコメディタッチの作風が受けたのか、10月11日放送の初回視聴率は11.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)とまずまずのすべり出しとなった。

 10月25日に放送された最新回の第3話は、娘が通う学校のPTAの一員としてハロウィンパーティーに龍が参加することとなり、そこへ乱入してきた強盗犯を龍が成敗する……というストーリーであった。玉木演じる龍が披露した“極道風の桃太郎”コスプレがよかったのか、この回の視聴率は9.2%と、この時間帯にしては健闘してみせた。

原作ファンからの批判が巻き起こった、『極主夫道』の“実写ドラマ限定”の設定

 そんな実写版『極主夫道』の放送期間ど真ん中に飛び込んできた同作アニメ化のニュース。原作マンガの作者・おおのこうすけ氏はTwitterで、「アニメになるとは…感無量です。皆様本当にありがとうございます」と喜びのコメントを発表。しかしネット上では、「ドラマが放送されているタイミングでのアニメ化発表って、完全にケンカ売ってないか?」などと、このタイミングでの発表を疑問に思うマンガファン、アニメファンの声が続出。一般的にマンガ作品は、まずアニメ化され、しかるのちに実写化される……という順序が守られることが多いことも、こうしたネガティブな反応が押し寄せたことの背景にあるのだろう。

 また、実写版の放送開始前には、実写版『極主夫道』では龍・美久の間に娘がいる……という原作にはない設定が発表され、賛否両論入り乱れSNS上で大炎上してしまった。このことも、「わざわざ実写版の放送期間中にアニメ化が発表された」ことに対するファンのザワツキを拡大させてしまったことの背景にあるようだ。つまり、「大人気マンガの実写版にネガティブな声が多いから、急きょアニメ版の制作が決まった」ように見えたのだろう。

 事実、アニメ版の龍にベテラン人気声優の津田健次郎の配役が決定したことも、原作ファンからは好意的に受け止められたようだ。これは、ドラマ版放送前の昨年12月、原作マンガの単行本5巻発売記念として『極主夫道』の「実写PV」がYouTubeで公開され、このPVでは津田健次郎が龍を演じて大好評だったことを受けてのもの。実写版と違って原作ファンからも大好評だった津田の“続投”が決まり、ファンとしては「やっぱり実写版よりアニメ版のほうがいいよね」ということなのだろう。

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マンガ家・おおのこうすけによる原作マンガ版『極主夫道』第1巻(新潮社)。主人公・龍は“伝説の極道”と呼ばれながらも結婚を機に“専業主夫”へ……。ハートウォーミングな任侠コメディ。

コロナ禍のなか、実写ドラマ以上に制作が遅れがちなアニメ業界

 ファンの側のこうした声に対し、ある声優事務所のマネージャーは、一般論として以下のように語る。

「実写化がアニメ化に先行することは、まったく珍しいことではないと思いますね。深夜帯や独立局で放送されるコアなファン向けのアニメだと、原作マンガがまずはアニメ化される……というケースが多いでしょうが、『極主夫道』は玉木宏くんが主演のメジャー作ですしね。

 実写化がアニメ化に先行したケースで有名なのは、『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子/講談社)とかでしょうか。この作品は、2006年10月から上野樹里主演で実写ドラマがフジテレビで放送されましたが、アニメ化は翌2007年でした。そもそも複数企業に出資してもらう製作委員会方式が一般的になった昨今、実写化、アニメ化なんてかなり早い段階で決まっているもの。あとはプロモーション的な意味合いも考えながら、『どのタイミングで発表するか』だけの話です。『極主夫道』ではたまたま実写化が先行した……というだけなのでは」

 とはいえこのコロナ禍、アニメ現場では実写ドラマ以上に制作が遅れがちな事情もあるという。

「今年4月クールのドラマの制作が遅れに遅れ、テレビの編成が大混乱に陥ったことはみなさんご存じでしょうが、それはアニメ制作現場でも一緒。アニメの収録現場は基本的に密閉空間のスタジオですから、大人数の人が集えばあっというまに“3密”ですからね。有名どころでは、『ポケットモンスター』(テレビ東京系)や『ヒーリングっど プリキュア』(テレビ朝日系)が一時、放送中止に追い込まれましたよね。

 ある程度放送体制が平常に戻った今でも、アテレコの際には万全の感染対策が取られてますよ。キャラの掛け合いのシーンなどの場合、以前であれば会話するキャラを担当する声優全員が同時にスタジオに入って収録するのが当たり前でしたが、今では少人数、ヘタしたらひとりでスタジオに入り、個人ごとに収録してそれを編集して会話パートを成立させる……といったやり方が珍しくなくなりました。

『極主夫道』もひょっとしたら、そういった事情でアニメ業界がドタバタするなか、発表がこのタイミングにずれ込んでしまった……といったことはあるかもしれませんね」(前出・声優プロマネージャー)

野島伸司、古沢良太などの有名ドラマ脚本家がアニメ業界に“転身”?

 実写ドラマがそうであるように、コロナ禍の影響もあってアニメ業界も大きな変動期にあるという。

「実写ドラマがマンガ原作、小説原作のものばかりだと批判されるようになって久しいですが、引き続きこの傾向は続くでしょう。ネット配信の一般化に加えてのこのコロナ禍で、テレビ局も収益によりシビアになってきており、となればある程度“数字が読める”原作ものは、増えこそすれ減る理由などない。

 一方でその原作となるマンガのほうも、大手出版社も続々とウェブマンガメディアに参入し、発表の場が増えて供給過多状態にあります。そのなかでヒットした一部の作品にはアニメ化、実写ドラマ化、そして映画化……とオファーが殺到するという傾向もますます強まっている。そうした量産状況のなかで、先に実写化されその後アニメ化が発表される……なんて事態も、今後はまったく珍しくなくなるでしょうね」(前出・声優プロマネージャー)

 こうした流れのなかで、実写ドラマの有名脚本家がアニメへ進出するという“逆転現象”も起こっているようだ。『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)や『高校教師』(TBS系)などで知られる野島伸司が原案・脚本を手がけるオリジナルアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』の制作が10月9日に発表され、話題を読んだことは記憶に新しい。同作は、2021年1月より日本テレビ系で放送開始予定となっている。

 また、人気ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)シリーズの脚本家として知られる古沢良太も、オリジナルアニメ『GREAT PRETENDER』の脚本を手がけ、こちらはNetflixで先行配信されたのち、現在はフジテレビ系で放送中だ。

 テレビ業界、アニメ業界が過渡期にあることのひとつの象徴が今回の、このタイミングでの『極主夫道』アニメ化発表、というニュースだったのかも知れない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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