外部試験の採用には越えなければいけない2つの壁
一つはアウトプット系2技能をいかに公正かつ大量に採点するかだ。たとえば「Speaking」を面接形式で行う場合、現在のセンター試験の受験者50万人が全員受けると仮定すると、1人が10人の受験者を面接できるとしても5万人の試験官が必要になる。ネイティブレベルの試験官を離島も含めて全国に配置するのも難しいし、これだけの数の試験官に公正な採点基準を伝えるのも相当困難である。
この問題を解決するために4技能試験の本命と目されるTEAP(Test of English Communication)とGTECは、CBT(Computer Based Testing)を導入して、遠隔地に試験官を配置しないで採点を海外にアウトソースすることを試みている。ただ、この形式も最近始まったもので、50万人の受け皿として十分な実証データが揃っていない。4年間の導入期を通じて受験者のデータを揃えながら公正なテストへと成長させていこうというのが、両テストが考えていることだろう。
もう一つの壁は費用だ。現在のセンター試験受験料は、3教科以上で1万8000円。これは新テストになっても英語以外の教科でかかる。外部試験を採用するとは、それ以外にコストがかかることになる。前述のTEAPは1万5000円、GTECは9720円となっている。年間2回の受験が認められるので、高スコアを目指して2回受験したいというのが、多くの受験生の思いだろう。文科省は、各テストへ受験者の負担軽減策を求めるとしているが、ここに国からの補助金などは期待できなそうだ。低所得者層への無償化も各試験に要請するようであるが、TOEFLなど海外団体の実施する試験がこれに応じるかは疑問である。
アウトプットへの高度なフィードバックが社会的なボトルネックに
上記の外部試験採用は、解決の目処を付けることができそうであるが、教える側の準備に関しては、4年の移行期間中に解決できるかは疑問である。アウトプット系の2技能を伸ばしていくためには、生徒のアウトプットに質の高いフィードバックをする必要がある。このフィードバックができる人材が学校教育の現場には圧倒的に足りていない。