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維新・尼崎市議、政治ポスターで『鬼滅の刃』デザイン流用?光本氏「集英社に確認して作成」

文=菅谷仁/編集部
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維新・尼崎市議、政治ポスターで『鬼滅の刃』デザイン流用?光本氏「集英社に確認して作成」の画像1
尼崎市議会公式サイトより(電話番号を編集部で消しています)

「週刊少年ジャンプ」(集英社)に掲載された、国民的な人気漫画『鬼滅の刃』(同、吾峠呼世晴作)の各種デザインを流用したみられる兵庫維新の会所属市議の政治活動ポスターがTwitter上で話題になっている。ポスターは兵庫維新の会・尼崎市議会議員団幹事長の光本圭祐氏が掲示していたもの。当サイトの取材に対し、集英社は「基本的に政治利用に許諾は出していない」などと話す一方、光本氏は「集英社の知的財産課に相談した上で作成した」と主張している。何があったのか調べてみた。

 Twitter上では2日午後3時半ごろから、このポスターの写真が拡散されはじめ、複数のTwitterユーザーから「これは流石に出版社なんとか言ったほうがいい」「ジャンプにうったえられそうですねー」などの指摘が相次いでいた。

 ポスターは、作中の主人公竈門炭治郎の半纏に描かれている市松模様が全面に描かれていた。左上に『鬼滅の刃』のタイトルロゴと似たデザインで「維新の会」と記され、維新の会副代表で大阪府知事の吉村洋文氏と光本氏のバストアップ写真2枚とともに、「心を燃やせ!」とのキャッチコピーも記載されていた。ちなみに「心を燃やせ!」は、作中の人気キャラ、煉獄杏寿郎のセリフとして広く知られている。

鬼滅ブームにあやかった商品は大量に作られているが……

 市松模様は日本の伝統的な模様でもあり、必ずしも『鬼滅の刃』固有のデザインというわけではない。そのためか、昨年から続く「鬼滅ブーム」にあやかって、さまざまな企業が商品や広告のデザインに採用し始めている。一連のブームが新型コロナウイルス感染症の拡大で冷え込む日本経済に活力を与えている。だが、ポスターは市松模様だけではなく、タイトルロゴのデザインを似せている点、作中の名セリフが使われている点などがあったため、SNS上で指摘されたようだ。

 また一般的に、献血や防犯活動など公共性の高い広報企画や物品を除き、特定の政党による漫画・アニメ作品の利用はハードルが高いことで知られている。仮に使用許諾を取らずに各政党がPRに乱用してしまうと、作者の思想信条が曲解される危険性や、ファンの間に不要な分断を生む可能性もあるためだ。一般的に線引きが難しい話題であるものの、今回の件はどのように解釈すればいいのだろうか。

 当サイトは3日、集英社に同ポスターの使用許諾に関して問い合わせたところ、同広報部担当者は次のように語った。

「使用許諾申請については、いろいろな企業、個人様からいただいているので、すべてを遡ることは難しいのですが、基本的にそういった(編集部注、以下同:政治的な)利用には許諾は出さないので、許諾は出していないと思われます。

 ただ、作品にはさまざまな形で権利があります。それが原作に基づいているものなのか、アニメに基いているものなのかは、(ポスターを)見ていないので、なんとも申し上げられません。アニメの場合はアニメ制作会社が判断する場合もありますので、なんとも言えない部分もあります。

 『鬼滅の刃』に関してはいろいろな権利の侵害がありますので、重大なもの、法に触れるものから対応をしています。それぞれの個別の案件にはお答えしておりません」

日本維新の会は「兵庫か光本氏本人が製作したもの」との認識

 一方、同ポスターについて日本維新の会の広報担当者は次のように説明する。

「党としては関知していません。兵庫か、光本本人が製作したものになります。党としては、『違法性はないようにしてくれ』とは申し伝えています。(党員の名前や写真などの)面積とか法律で決まっている項目を守るよう、周知していますが個々のポスターのデザインまでは把握していません」

 そこで当サイトでは光本市議本人に、同ポスターの使用許諾の有無と製作されるまでの経緯を聞いた。

光本市議による説明

 大前提として、弁護士のリーガルチェックを受け、加えて集英社さんの知的財産課さんからお話をお聞かせいただいて作成しています。

 作成に至った経緯ですが、昨年夏に大学生のインターンを受け入れました。インターンの方々から「若い世代が、政治に興味をもってもらうためにはどうしたらいいだろう」とか「選挙権のない子供たちに注目してもらう、親しみを持ってもらうためにはどうしたらいいだろう」というアイデアを出していただき、議論する中で今回のポスターの企画が生まれました。「ポスターは目立ってなんぼですよね」「政治家は古い人やとっつきにくい人が多い」という意見が多かったため、鬼滅風のポスターにしようとことになりました。

 とはいえ、その辺の権利関係はしっかりしなければなりませんので、集英社の知的財産課にお電話で確認をさせていただきました。

 市松模様に関しては、集英社さんは「日本古来の模様なので、許諾する、許諾しないという立場にありません」とのことでした。ポスターの市松模様はうちの政党カラーの黄緑色で作っているので、集英社さんは『そこを黄緑色にされているのであれば、なおさら話はありません』ということでした。

 ポスター記載のスローガンに関しても若い世代に考えてもらいました。「日ごろから言うてるようなセリフが良い」ということで、「心を燃やせ」になりました。

 これに関しても集英社さんにお話を聞いたところ、「心を燃やせ」「全集中」などの短いセリフは、作品に関係なく使う人がいるので「集英社として許諾する、しないといえる立場にありません」とのことでした。明らかに作品が特定できるような「長いセリフ」に関しては、「確認をさせてもらう」とのことでした。

 政党ロゴのデザインに関しては、『鬼滅の刃』のロゴをそのまま使って、中身の漢字だけ変えるというのは「アウトに近いグレー」です。そこで大学生と『自分らで考えましょかー』と議論した結果、政治で旋風を起こすという発想が出てきて、台風の目をイメージしたデザインの中に政党名を記したデザインにしました。それも集英社さんに確認しまして、『そもそも鬼滅の刃と同一のデザインではないし、そこに入っている漢字も政党名ですし、違うものなので集英社として何かいう話ではない』との見解をいただきました。

 念のため、先ほども知的財産課の担当者の方にお電話で確認させていただいています。担当者の方のお話では、「見る方が商標権や著作権に詳しくない方の方が多いので、集英社に許諾しているかに関する問い合わせが多い」「ポスターを見て鬼滅の刃を連想された方のお問合せは、光本さんの方で対応してください」とのお話でしたので、このようにご説明させていただくことになった次第です。

(文・構成=菅谷仁/編集部)

菅谷仁/Business Journal編集部

菅谷仁/Business Journal編集部

 神奈川新聞記者、創出版月刊『創』編集部員、河北新報福島総局・本社報道部東日本大震災取材班記者を経て2019年から現職。

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