2001年9月11日に米国内で発生した同時多発テロ事件から16年。この事件については米政府の「9・11委員会」が発生から3年後の2004年に公式の調査報告書を発表したものの、その内容に納得できないとして真相究明を求める声が今なお多い。
公式見解に対する異論は多岐にわたり、それに対する反論もあって議論が非常に複雑である。異論のほんの一部を挙げれば、以下のようなものがある。
・世界貿易センタービル(ツインタワーの北棟、南棟、7号棟など)の崩壊は航空機の衝突とそれに伴う火災ではなく、人為的な爆破によるとの説
・国防総省(通称ペンタゴン)に突入した飛行物体は旅客機ではなくミサイルとの説
・テロを米政府があらかじめ知っていたが無視したとの説、あるいは政府による自作自演との説
これらの説を念頭に置いてもらったうえで、9・11テロに関するある事実を紹介したい。テロで命を落とした人々のほかに、公式見解に疑義を唱えた人や真相究明の鍵を握っていたとみられる人が多く不審な死を遂げていることである。
以下、おもな不審死を時系列で記す。
プラサナ・カラハスティさん(Prasanna Kalahasthi)は南カリフォルニア大学で歯科医の勉強をする女子学生だった。9・11テロから1カ月後の01年10月19日、ロサンゼルスのアパートで死亡する。自殺とされる。まだ25歳の若さだった。
プラサナさんはある男性と結婚していた。ペンディアラ・バミシクリシュナ氏。同氏は世界貿易センター北棟に突っ込んだアメリカン航空11便の乗客の1人とされるが、元々の乗客名簿には名前がなく、その後、互いに矛盾する2組の非公式名簿に現れた謎の人物である。
キャサリン・スミスさん(Katherine Smith)はテネシー州車両管理局の職員で、アラブ人の不法入国者に運転免許証を売った罪に問われた。裁判所に出廷する前日の02年2月10日、電柱に突っ込み炎に包まれた自家用車の中で、死亡しているのが見つかる。
キャサリンさんの着衣からはガソリンが発見された。米連邦捜査局(FBI)の調べによると、発火は可燃性物質によるもので、死因は衝突による火災ではなかった。不法入国者のひとりには世界貿易センターの入館許可証が発行されており、テロとなんらかの関係があるとみられている。>
ブッシュ大統領弟のベビーシッター
バーサ・シャンペーンさん(Bertha Champagne)はベビーシッター。当時のブッシュ大統領(息子)の弟、マービン・ブッシュ氏の2人の子供を長年世話した。03年9月29日、バージニア州アレクサンドリアにあるブッシュ家の私道で異様な死を遂げる。警察の発表によると、自家用車のギアを入れたまま降りたところ、車がひとりでに動きだし、建物との間に挟まれ圧死したという。享年62。
バーサさんの雇い主であるブッシュ氏は1993年から2000年まで、警備会社セキュラコム(のちにストラテセックに改称)の取締役を務める。同社は世界貿易センターのほか、国防総省に突っ込んだアメリカン航空機が飛び立ったダレス国際空港と警備契約を結んでいた。出資者にはクウェートやサウジアラビアの投資家が含まれていた。バーサさんはブッシュ家で何を見たのだろうか。
クリストファー・ランディスさん(Christopher Landis)はバージニア州運輸局職員。同州アーリントンにある国防総省に対する攻撃の真相を追ったドキュメンタリー映画『ペンタコン』の制作チームに写真を渡す。06年11月16日、死亡。自殺とされる。映画の公式ホームページに制作チームはこう記している。
「きわめて奇妙で疑わしい成り行きに、偶然だと祈るばかりです。……クリストファーさんの自殺は、彼に会い、写真をいただいてから2カ月半後です。……偶然でしょうか。そう願うしかありませんが、彼はとても若く、4人のお子さん(男女2人ずつ)があり、仕事にも恵まれていました。間違いないのは、彼と話したとき、ひどく心配そうだったことです」
デボラ・ポールフリーさん(Deborah Palfrey)はワシントンでコールガール斡旋業を営み、夜の世界で有名な存在だった。08年5月1日、フロリダ州で母親のトレーラーハウスの外で首をつっているのが見つかる。
デボラさんの「顧客リスト」には国の有力者が名を連ねており、彼女の弁護士によると当時のチェイニー副大統領も含まれていたという。生前、自殺なんかするものかとよく語ったデボラさんはジャーナリストにこう打ち明けていた。
「情報があるの。9・11委員会はすごく興味を持つと思うわ」
バリー・ジェニングスさん(Barry Jennings)はニューヨーク市住宅局の職員で、世界貿易センターのツインタワーが崩落する前、7号棟で爆発音を聞いたと証言した。英BBCのインタビューを受けた1カ月後の08年8月19日、53歳で死亡する。おかしなことに、死亡時の状況は不明なままである。
生前バリーさんにインタビューした映画製作者が私立探偵を雇い、死の真相を探らせたところ、探偵は調査を打ち切り、映画製作者に「二度と連絡するな」と言った。映画製作者が遺族の家を訪ねてみると、空き家で売りに出されていたという。
独立機関による調査を求めた人物
ケネス・ジョハンマンさん(Kenneth Johannemann)はテロ発生当日、世界貿易センターの北棟で臨時雇いの守衛として働いていた。全身炎に包まれた男性を救助して英雄となる。また、ツインタワーの両方で爆発音を聞いたと証言する。
08年8月31日、43歳のケネスさんは銃で頭を撃ち抜いて死んでいるのが見つかる。9・11以来、気持ちがひどく落ち込み、深酒をするようになっていたという。
ビバリー・エッカートさん(Beverly Eckert)は9・11テロで夫を失う。政府の説明に納得せず、独立機関による調査を求めた。賠償金の受け取りを拒み、雑誌に「私を金で黙らせることはできない」と題する文章を寄稿した。
ビバリーさんは09年2月6日、他の人々とともにホワイトハウスにオバマ大統領を訪ね、テロとの戦いについて意見交換した。ところがそのわずか1週間後の2月12日、飛行機事故で死亡する。
ダニー・ジョウェンコさん(Danny Jowenko)はオランダのビル爆破解体専門業者。世界貿易センター7号棟の倒壊は爆破によるものと主張した。11年7月16日、自動車事故で死亡する。オランダの村の一本道を1台で走っていたとされる。
フィリップ・マーシャルさん(Philip Marshall)は元航空機パイロットの著作家。9・11テロに関する著作を発表し、政府見解を批判した。13年2月6日、死亡。2人の子供と愛犬を射殺した後、同じ銃で自殺したとされる。
フィリップさんは新刊の編集作業や発売準備中、わけもなくおびえているようだったという。米中央情報局(CIA)とつながりがあり、イラン・コントラ事件に関与したともいわれる。
不審死のリストがこれ以上増えないことを祈るばかりだ。彼らの死は、9・11テロとは無関係なのかもしれない。しかし本当にそうかどうかは、真相を確かめない限りわからない。事件を風化させることなく真実を追求することは、同時代にテロを目撃した者の責務だろう。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)
●主要参照文献
Donald Jeffries, Hidden History: An Exposé of Modern Crimes, Conspiracies, and Cover-Ups in American Politics (2014, Skyhorse Publishing)
9-11/Premature death,
MARVIN BUSH EMPLOYEE’S MYSTERIOUS DEATH – Connections to 9/11?