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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国、海上浮動式原発を日本近海に建設の可能性…トランプ訪問前に韓国を取り込み米国を牽制

文=渡邉哲也/経済評論家
中国、海上浮動式原発を日本近海に建設の可能性…トランプ訪問前に韓国を取り込み米国を牽制の画像1中国の習近平国家主席(写真:Top Photo/アフロ)

 アメリカのドナルド・トランプ大統領の訪問を前に、中国韓国が関係改善をアピールしている。

 中韓両国は10月31日に、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備や朝鮮半島の非核化実現に関する合意を発表した。中国は韓国のTHAAD配備をめぐって事実上の経済制裁を与えるなど、両国関係は冷え切っていた。

 しかし、経済制裁を解除してほしい韓国とトランプ大統領訪問前に韓国を取り込みたい中国の利害が一致したかたちだ。ただ、両国の友好姿勢については「北朝鮮に強硬姿勢を示すトランプ大統領に対する牽制」という見方が強く、中国としては「アメリカ側になびくなよ」と韓国に釘を刺したともいえる。

韓国に大きな貸しをつくった中国の策略

 10月13日に発表された、中国と韓国の通貨交換(スワップ)協定の延長にも、そうした背景が見え隠れしていた。同協定は同月10日に期限切れを迎えたが、その後数日、延長が発表されなかったことが物議を醸した。「中国が韓国を見放した」「中国は(18日からの)党大会を優先したのでは」というわけだ。

 同協定は、期限満了の数カ月前に両国の合意によって延長が発表されるのが通例だが、期限切れから数日後に取って付けたように延長が発表されるという異例の事態となった。

 通貨スワップ協定とは、各国の政府や中央銀行が相互に資金を融通し合う仕組みであり、金融危機や通貨価値急落などに備える目的がある。資金流出などで外貨が枯渇しそうになった際に相手国から調達することができる、いわば保険のような仕組みだ。

 そのため、契約が切れても、すぐに韓国経済に悪影響を及ぼすわけではないが、国際的な市場の混乱やヘッジファンドなどによる売り浴びせに遭った際の防御力が弱まることになる。また、中長期的な資金流出や海外からの資金調達の際の金利上昇の原因にもなり得るため、通貨体制の脆弱性が懸念される事態になる。

 韓国は中国と560億ドルの通貨スワップを締結しており、最大の通貨スワップ相手国だ。一方、日本との通貨スワップ協定は関係悪化を背景に2015年2月に終了しており、中国との延長がなければウォンは信用の裏付けとなるものを完全に失うところであった。そんななか、党大会前の大事な時期に中国が延長に合意したことについては「中国が韓国に貸しをつくった」という見方が強い。

中国、海上原発を軍事兵器化なら米国の脅威に

 その中国では、初となる海上浮動式の原子力発電所が完成する見通しだ。国有企業の中国船舶重工集団らが中心となって開発が進められており、技術者が「まもなく完成することに自信を持っている」と明らかにした。

 海上浮動式原発の完成については、以前からアメリカのシンクタンクなどが警戒する姿勢を示していた。なぜなら、海上を移動することができるため、それ自体が軍事兵器になり得るからだ。

 また、周囲への影響や海洋汚染などの問題を考えた場合、簡単に攻撃することもできない。仮に、中国が軍事拠点化を進める南シナ海に多数の海上浮動式原発が建設されれば、アメリカとしても容易に手出しができなくなるため、脅威になることは間違いない。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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