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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国国有企業、海外企業傘下に収め技術入手か…ハリウッド進出で米国世論操作も

文=渡邉哲也/経済評論家
中国国有企業、海外企業傘下に収め技術入手か…ハリウッド進出で米国世論操作もの画像1中国の習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

 中国習近平政権の2期目が始動した。

 中国は10月24日に第19回中国共産党全国代表大会を終え、翌25日に開かれた第19期中央委員会第1回総会で、7人の最高指導部(政治局常務委員)を選出した。いわゆる「チャイナ・セブン」だ。総書記で国家主席の習氏と首相の李克強氏が留任し、ほか5人が政治局員から昇格するかたちで入れ替わった。

 これによって明らかになったのは、習氏への権力集中だ。今回の党大会では「党主席」ポストの復活こそならなかったものの、「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」が党規約に盛り込まれた。党規約に個人の名を冠した思想が入れられるのは、中国建国の父である毛沢東氏と改革開放で近代化を成し遂げたトウ小平氏以来の快挙である。

 また、これはいわゆる“先祖返り”的な思想であり、今後はさまざまな分野で社会主義的要素が強まることが予想される。

 習氏はすでに、昨年の時点で「別格の指導者」を意味する「核心」の称号を得ている。これも、過去に毛氏、トウ氏、江沢民氏の3名にしか用いられていないものだ。「核心」に加えて「習近平思想」を党規約に入れ込んだことで、習氏の権力掌握がより一層進むことは確実だ。

 また、筆者は党規約の改正案に「一帯一路」の推進が盛り込まれたことにも注目したい。「現代版シルクロード経済圏構想」といわれる「一帯一路」は、中国が東南アジアからヨーロッパまでの広域経済圏を支配するというものであり、習氏肝煎りの政策だ。

 今回、この推進が党規約に導入されたことも、習氏への集権を示すものだろう。同時に、政治方針として明確化されたことで、中国は何がなんでも「一帯一路」を成功させる必要が出てきた。そのため、今後はより強力に推進していくことが考えられる。しかし、中国の強引な海外進出は一部の現地で反発を招いており、「一帯一路」の拡大は日米など先進国との衝突の要因になることも確かだ。

ハリウッドを買い漁る中国マネー

 また、懸案であった国有企業改革についても道筋がつけられた。しかし、「国有企業を民営化する」のではなく、「民間企業を国有化する」という方向に進むとされている。それによって、今後は中国企業に買収された海外企業の扱いが問題になる可能性が高い。

 経済成長に伴い、中国はさまざまな分野で世界的に企業買収を行ってきた。しかし、それが許されたのはあくまで「買収するのは民間企業」「将来的に中国経済はさらに自由化が進められる」という前提があったからだ。習氏の姿勢を見る限り、この条件は根本から覆されることになる。

 中国の民間企業に買収されたはずが国有企業の配下に置かれることになれば、買収された企業の技術やノウハウなどが中国に掌握される可能性が高まる。基本的に、自由主義市場において、国有企業による容易な企業買収を許している国はない。不公正な取引や競争が発生する懸念が生まれるからだ。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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