今年、北朝鮮から日本周辺に飛んできたミサイルは例年より多かった。北朝鮮が今年行ったミサイル発射実験は計16回で、発射されたミサイルの数は、2月12日の中距離弾道ミサイル「北極星2型」から11月29日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15型」まで合計21発。うち3発は短距離ミサイル、4発が地対艦ミサイルで、残り14発はすべて弾道ミサイルだった。
高高度のロフテッド軌道で発射された弾道ミサイルは7発で、すべて日本海に落下した。一方、8月29日と9月15日に通常軌道で発射された2発は、日本列島の津軽海峡上空を飛び越え、襟裳岬東沖の太平洋上に落下した。
そんななか、11月29日にロフテッド軌道で発射された「火星15型」は最新型のICBMで、民間旅客機4機の乗員らが当該ミサイルとみられる飛翔体を目撃していたことがニュースとなり、今後ミサイルが旅客機に衝突する事故が起きる可能性を懸念する声も多い。そこで、元日本航空(JAL)パイロットで航空評論家の杉江弘氏に話を聞いた。
リルート
「北朝鮮がICBMを発射した11月29日、旅客機4機がミサイルを目撃しています。日本航空は東京発ロンドン行きで、北海道・稚内を通るルートなので、津軽海峡あたりの日本海だと思います。キャセイパシフィックはサンフランシスコ発香港行きで、大気圏に再突入してバラバラになったところを目撃した。大気圏に入るところなので相当遠いところからでも見えます。民間機は高く飛んでも高度1万2000メートル。ミサイルはそれより高い高度を飛ぶので、少し目線の上に見えたはずです。大韓航空はサンフランシスコ発ソウル行きと、ロサンゼルス発ソウル行きで、やはりミサイルの光を見ています。
ミサイルが旅客機に当たるかといえば、確率はほとんどゼロに近いですが、それでもゼロではない。航空会社が安心、安全を考えるなら、北朝鮮がミサイルを発射する兆候があれば、リルートといって違う航路を取るほうがいい。パイロットの立場からもそう思います。実際、シンガポール航空はかなり前からルートを変更していました。独自の判断をしたのでしょう。北朝鮮がどうも燃料を注入している、近々ミサイルを発射しそうだとわかれば、そのあいだだけ別のルートを飛ぶだけでもいいのです」