2017年、国際社会は北朝鮮に振り回され続けている。「朝鮮半島有事」「米朝開戦」は現実のものになるのか否か。
前回、前々回の記事では、元防衛省で軍事アナリストの西村金一氏の話をお伝えした。今回は、北朝鮮の特殊部隊や日本の防衛体制について聞いた。
北朝鮮の暴発リスクが来春に高まる理由
国際連合安全保障理事会や各国の経済制裁がジワジワと効いてくるのは、これから年末にかけてといわれる。「困窮した北朝鮮が年内に暴発する」という可能性はないのだろうか。
「収穫の時期は、だいたい秋ですよね。そのため、これからの時期は収穫した米や作物があるため、なんとか耐えられるのです。逆に、食料が足りなくなるのが夏。1990年代の飢饉のときも、人が多く亡くなったのは夏ぐらいまででした。
そのため、もし北朝鮮が暴発するとしたら、4~8月くらいが可能性が高いと思います。自前の食料がない、外からも入ってこない、というダブルパンチになって初めて経済制裁が効くわけです。
これは石油ですが、旧ソ連は北朝鮮に50万tくらいタダであげていました。しかし、旧ソ連崩壊後のロシアはお金を払わないと渡さないようになった。中国も50万~100万tくらいあげており、足りない分は買っています。それも中東から直接買うのではなく、ブラジルや東南アジアの国などを仲介して輸入しています。
しかし、今は経済制裁でお金を稼ぐ手段が少なくなっています。来年の春にはまた米韓合同軍事演習が行われるので、北朝鮮も軍隊を動かさなくてはならない。そうすると、石油が必要になるし、兵士の食料も必要になる。北朝鮮が困る状況が生まれるわけで、そのため緊張状態が高まるのではないでしょうか」(西村氏)
開戦前に2000人の特殊部隊が日本上陸か
もし緊張状態が戦争にまで発展したら、どのような状況になるのだろうか。
「北朝鮮の海軍と空軍は兵器が古いので、一気に潰されるでしょう。ただ、地上軍の一部と特殊部隊は残ります。そして、これが非常にやっかいなのです。
北朝鮮の軍事パレードで、顔を黒く塗り、黒いサングラス姿で行進しているのが特殊部隊です。戦争になってからでは送り込みにくいので、戦争が起きるかもしれないという状況で、北朝鮮は特殊部隊を送り込んでくることが予想されます。
約10万人の特殊部隊のうち、7万~8万人くらいは韓国に向かうでしょう。日本に来るのは2000~5000人程度。小型潜水艦からアクアラングで潜入したり、貨物船から工作船に乗り移ったりして入ってくることが考えられます。
また、ステルス性能のある『An-2』という輸送機があります。これは木と布でできているため、レーダーに映りにくい。しかし、燃料がそんなに積めないので1200kmくらいしか飛べません。韓国の南部まで行って戻ってくることはできますが、日本に来る場合は片道切符になってしまいます」(同)
北朝鮮が事前に特殊部隊を送り込んでくる可能性もあるようだ。また、西村氏は「仮に2000人も入ってきたら、大変なことになります」と語る。