厚顔無恥とは、こういう人のことを指すのだろう。数々の金銭スキャンダルが原因となって失脚したはずの農林族のドン、西川公也元農相が政界復帰を目指し、活動を再開したとの情報が永田町・霞ヶ関で飛び交っている。
盟友である吉川貴盛元農相が鶏卵生産会社「アキタフーズ」(広島県福山市)の前代表=贈賄罪で在宅起訴=から賄賂500万円を受け取ったとして収賄罪で在宅起訴された事件に絡み、西川氏も1000万円単位の不透明な金を受領したとの疑惑が浮上。本来は謹慎すべき身だが、後ろ盾となっている二階俊博自民党幹事長が西川氏の政治活動を黙認しているとみられる。
次期衆院選に出馬か
関係者は「現在は二階派付という形で砂防会館を拠点に活動しているようだ」と証言する。二階幹事長率いる二階派は自民党本部からほど近い砂防会館(東京都千代田区)に事務所を構えており、西川氏は衆院議員時代に同派事務総長まで上り詰めた。鶏卵汚職事件に伴い、非常勤の国家公務員である内閣官房参与を辞任せざるを得なくなり、表舞台への復帰は閉ざされたはずだった。ところが、今秋までに予定されている次期衆院選に栃木2区から出馬を模索しているようだ。
西川氏を知る政府関係者は「ある意味ものすごいバイタリティーだ。なんとか永田町とのパイプを保っておきたいのだろう。普通に考えれば勝ち上がることは難しいだろうけど」と突き放す。西川氏は2014年と17年の衆院選では、小選挙区で2連敗を喫した。14年はかろうじて比例復活したが、17年は73歳定年制の規定により、重複立候補はできず、涙を飲み現在浪人中。落選後も党農林部会に顔を出すなど積極的に活動していたことから「現役時代に相当美味しい汁を吸ったのだろう」(全国紙記者)と皮肉交じりの声も聞かれる。
公認は下りない?
本人の希望とは裏腹に、小選挙区で2回続けて敗北したため、勝てない候補者とみなされ、自民党から公認が下りない可能性が高い。しかも、今回の鶏卵汚職に限らず、政治資金問題で14年に念願叶って就任した農相をわずか5カ月で辞任に追い込まれるなど、スキャンダルの「総合商社」といっても過言ではない。
一部報道によると、栃木県職員時代に、建設業者から2万円の賄賂を受け取ったとして収賄容疑で逮捕された過去を持つ。西川氏は起訴猶予処分になったというが、まさに筋金入りの金権政治家だ。
昨年末から政界をざわつかせていた鶏卵汚職事件では、元農相の吉川被告が在宅起訴された一方、西川氏の立件は見送られた。西川氏は内閣官房参与在任中に1000万円単位の現金を受け取ったとされているものの、鶏卵行政への直接的な職務権限がないことが理由とみられる。
ある農林水産省関係者は「おそらく西川さんのほうが吉川さんより多額の現金を受け取っている。しかも、西川さんはアキタフーズ前代表にいろいろな政治家を紹介するなど暗躍していた。一番の悪人が立件されず、あまりにも不公平」と語気を強める。
西川氏が現在、どのような活動を行っているかは不明。ただ、大手メディア関係者は「スキャンダルまみれの西川氏の活動を黙認している二階幹事長の身内びいきにも程がある」と憤る。確かに二階幹事長は身内に甘い。自分の息のかかった候補を、自民党の別の議員が支部長に就いている選挙区に送り込むなど、政治手法は強引。行事役であるはずの幹事長が自ら軋轢を生んでおり、公党としてのガバナンスが欠如しているといわざるを得ない。
劣化する農林族
それにしても、西川氏を筆頭に農林族議員は問題のある人物が多く、近年劣化が著しい。特にパワハラやバラマキなどに走る江藤拓前農相の評判は最悪だ。「怒鳴る」「畜産農家に金をバラまくことしか考えていない」など散々。江藤氏が大臣在任中にコロナ関連の補助金政策を無秩序に進めた結果、1300億円の血税の追加投入を余儀なくされ、「まさに行政を歪めた」(農水省幹部)。利益誘導に走るのではなく、農家の自立を促す視点に立った政策を進めることを強く祈る。
(文=編集部)