秋篠宮家の長女、眞子さまと婚約が内定している小室圭さんは、4月8日に公表した文書で、母の元婚約者の「返してもらうつもりはなかった」という発言に計23回も言及し、「(元婚約者が工面してくれた約400万円は)借金ではない」と強調した。その根拠としたのは、2012年9月に小室さん母子が元婚約者と面会した際に小室さんが「咄嗟に録音した」音声データである。
だが、それを覆す音声データが「文春オンライン」(4月14日配信)で公開された。これは、翌2013年8月に小室さん母子が元婚約者と金銭トラブルについて話しあった際に録音されたもので、元婚約者は「差し上げます、と言った覚えは、僕は一言もない」「ここから動いたお金は贈与、というのは成り立たない」などと述べており、返金を求める意思をはっきりと伝えている。
このような元婚約者の発言にも、2013年8月のやり取りにも、小室さんは文書の中で一言も触れていない。これは、小室さんが自己正当化の達人であり、不都合な事実や思い出したくない出来事が意識からすっぽり抜け落ちる「暗点化(scotomisation)」が起きやすいからだろう。
「暗点化」が起きると、自分にとって都合の悪い出来事や望ましくないことはおぼろげになり、記憶から抜け落ちる。そのため、客観的に見た事実とは異なることが記憶として残り、記憶がゆがめられる。結果的に、身勝手な記憶の歪曲のように見えることも少なくないが、必ずしも意識的に嘘をついているわけではない。
少なくとも小室さん本人に嘘をついているという認識はないだろうが、これは明らかな嘘よりも危険だ。なぜかといえば、嘘には他人を欺いている自覚があるが、「暗点化」も自己正当化も無意識に行われており、自覚がないからである。
眞子さまと小室さんは“フォリ・ア・ドゥ(folie à deux)”
それよりも危険だと思うのは、「返してもらうつもりはなかった」という音声データにもとづく小室さんの主張を眞子さまが信じておられることだ。4月15日発売の「週刊文春」(文藝春秋)によれば、「眞子さまは圭さんから隠し録音の存在を明かされ、返す必要がないのだと信じ込まれた」という。だからこそ、宮内庁の加地隆治皇嗣職大夫が文書公表の翌日に説明したように、お金を払わずに話し合いで解決するという基本方針に眞子さまのご意向が大きく影響したのだろうが、そこまで小室さんの話を真に受けておられる眞子さまにある種の危うさを感じずにはいられない。
もしかしたら、眞子さまと小室さんは“フォリ・ア・ドゥ(folie à deux)”の状態なのかもしれない。“フォリ”は「熱狂」「狂おしい情熱」、 “ドゥ”は数字の2を意味するフランス語であり、直訳すると「二人の熱狂」という意味である。現実からも、世間の常識からもズレた認識を共有している状態であり、場合によっては妄想に近づくこともある。
もちろん、恋に落ちると、相手を過大評価し、批判力を失って無批判になり、「ほれこみ」の状態に陥りやすい。その結果、“フォリ・ア・ドゥ”のようになることもあるのだが、眞子さまの場合はそれだけではないように思われる。
「隠し録音」の存在を小室さんから聞いたことによって、自分との会話も録音されているのではないかという不安や恐怖を眞子さまが抱かれたとしても不思議ではない。その結果、小室さんの言いなりになっているように見えなくもない。
眞子さまは「ほれこみ」の状態にあるので、「隠し録音」のことなど考えられないかもしれないが、ご両親の秋篠宮さまご夫妻が「破談になったら、私的な会話や金銭トラブルに関する相談などの隠し録りデータが暴露されるのではないか」と危惧される可能性は十分考えられる。この危惧ゆえに、秋篠宮さまが「結婚容認」発言をなさったと考えるのは、うがちすぎだろうか。
いずれにせよ、「隠し録音」の存在を小室さんが文書で明らかにしたのは、「借金ではない」と主張すると同時に、眞子さまと秋篠宮家に一種の「脅し」をかけるという思惑があったからだと私は思う。これが功を奏して、フォーダム大学の級友たちに話しているように「10月ごろに結婚する」(文春)ことになれば、小室さんはまさに相手を意のままに操り支配しようとする「マニピュレーター(manipulator)」といえるだろう。
(文=片田珠美/精神科医)