2018年で創立から72年目を迎える在日本大韓民国民団(民団)は2月22日、東京都の民団中央本部会館で「第54回定期中央大会」を開催し、新3機関長として、呂健二(ヨ・ゴニ)団長、朴安淳(パク・アンスン)議長、梁東一(ヤン・ドンイル)監察委員長を選出した。
新たな船出を迎える民団。冷え切った日韓関係の架け橋として存在意義が高まると同時に、その動向が注目されている。大会後に行われた3機関長の記者会見で、文在寅政権の姿勢が波紋を呼んでいる「日韓合意」や、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係などについて聞いた。
「日韓合意の実行を」で前団長の罷免運動に発展
呂団長は会見で、「微妙で緊張関係にある日韓関係の改善の役割を果たし、架け橋となっていく」とする決意表明を行った。その日韓関係のトゲになっているのが、従軍慰安婦問題における日韓合意だ。日韓両政府によって「最終的かつ不可逆的な解決」を見たはずだが、文政権が示した新方針に日本側が反発している。
――日韓合意について、韓国の文政権は新方針を示しましたが、民団としてはどう受け止めていますか。
呂健二氏(以下、呂)「日韓合意を誠実に両国が履行すべき」という、これまでの方針に変わりはありません。国と国が約束したことですから、ちゃんとやってくださいということです。我々の生活を守るためにも、これは言い続けなければなりません。
民団のなかには、いろいろな意見の方がいます。呉公太(オ・ゴンテ)前団長が16年の民団新年会で「日韓合意の実行を望む」と表明した際、「何を言っているんだ。女性たちの苦労もわからないのか。呉団長の罷免運動しよう」という動きが起きたこともあります。
民団団員の政治思想は右から左まであり、政党的には自民党以上に幅広いかもしれません。これを束ねていくのは容易ではありません。
韓国本国のほうの慰安婦に対する思い、あるいは日韓合意に納得していない感情は別として、私たちは日本社会で生きています。その日本社会においても、韓国挺身隊問題対策協議会に同感する人もいれば反対の意見もあります。慰安婦問題は、非常に微妙な問題です。
ただ、呉前団長が新年会で表明した当時、私は議長の職責にあり、事前に調整した上での発言ですので、今後もこの姿勢を引き継いでいきます。
――北朝鮮がミサイル発射や核実験を強行するなかで、朝鮮総連との関係についてはどう考えていますか。
呂 まず大前提として、民団は朝鮮総連と一度も信頼関係を構築したことはありません。創立当初、民団は反共団体でもあり、朝鮮総連との間では血を血で洗う闘争が全国で繰り広げられました。それによって犠牲になった方も大勢います。
民団は1970年代に韓国に墓参団を派遣する事業を行い、これがきっかけで朝鮮総連は力を落とすことになりました。日本に居住し地域社会と共生する立場から申し上げると、日本の方々が北朝鮮による拉致問題について、特に心を痛めていることは非常に理解できます。
かつて、北朝鮮は「地上の楽園」と宣伝して9万3000人の在日コリアンを北に送りましたが、その結果、脱北者が日本にも200人います。日本にゆかりのある方しか日本に来られないのが実情です。
核やミサイルについても、当初は「我が国は平和国家だから核開発などしていない」と言っていましたが、それが公になると「なぜ持って悪いのか。自衛の手段だ」と開き直る。拉致されたご家族の方に対しても、人の心があれば何か一言あってもいいはずですが、朝鮮総連からはなんの言葉もありません。
その部分をきちっとすれば、共に日本社会に生きる市民として、同じ民族として、話し合うこともありますが、今はまだその環境がまったく整っていません。