2日付朝日新聞は、財務省と森友学園の国有地取引に関して財務省内で作成された決裁文書について、契約当時の文書と、同省が昨年2月以降に国会議員へ開示した文書の内容に違いがあると報じた。朝日によれば、森友問題発覚後に書き換えられた疑いがあるという。この報道を受け、国会では野党が厳しく政府を追及しており、財務省の太田充理財局長は2日に開かれた衆院財務金融委員会で、文書の存在を調査した上で6日までに報告すると答弁した。
朝日によれば、契約当時の文書に書かれた森友側との交渉経緯に関する記述や、「特例」などの文言が、国会議員へ開示された文書では削除されていたというが、財務省が意図的に書き換えた可能性はあるのだろうか。旧大蔵省(現財務省)OBで元内閣参事官の高橋洋一・嘉悦大学教授はこう語る。
「もし事実であれば、財務省の担当者は刑法上の公文書偽造等罪に問われることになるので、財務省がこういう書き換えを行うということは、通常ではあり得ません。契約当初の文書とは違うものを国会議員に開示してしまったなど、担当者である官僚のとんでもないミスである可能性も考えられます。または、朝日が違うものを報道したかです。財務省内で保管されている契約当時のものとされる文書は、すでに一部が情報開示請求を受けて開示されており、法律に基づいて開示されたものなので、財務省としては、そちらのほうが間違っていたとは絶対に言えません。国会議員に開示されたものと情報開示請求で開示されたものは同じだという情報もあるので、財務省はどう説明するのでしょうか。ひょっとしたら、朝日の報道がおかしいと説明するかもしれません」
本件について、財務省の官僚が安倍政権への攻撃を意図してマスコミや国会議員に情報を流したという見方もあるが、高橋氏はこう否定する。
「どのような経緯で朝日が情報を入手したのかはわかりませんが、そうした官僚による“倒閣”的な動きではないでしょう。もし仮に書き換えが事実であれば、あくまで財務省の一官僚のミスとして処理されるでしょうし、法的に罪を問われるのも官僚個人だからです。安倍晋三首相や麻生太郎財務相は関係ないので、そもそも倒閣運動にはなり得ないからです」
また高橋氏は、倒閣運動という意味では、2月に発覚した厚労省による裁量労働制に関する調査データ異常問題のほうが注目されるべきだという。
「厚労省のデータ異常問題は、野党による国会での追及で公けになりましたが、その経緯に疑問を感じます。通常、厚労省の重要な政策や情報の公開についてはまず、すべて厚労省の労働政策審議会(労政審)に並べられ、調査審議されることになっています。今回のデータ異常は、この労政審を経ずに閣僚答弁されてから、野党が追及し、野党の部会で厚労省からデータ提供されたものですが、このプロセスは通常ではあり得ません。そもそも、この調査の企画は旧民主党時代にされていますから、こちらのほうがよほど“官僚による倒閣運動”である可能性を感じます」
いずれにせよ、6日までに財務省から発表される報告の内容が焦点となる。
(文=編集部)