――このままだと安倍政権は死に体ですか。
朝霞 安倍政権だけではなく、自公連立政権が沈没状態ですので、安倍首相に解散を打たせない方向で自公は動くでしょう。自民党側からすれば、今、政党支持率は3割以上ありますが、もし内閣支持率が2割を切り、それにひきずられるかたちで政党支持率も下がれば一大事です。こうなった場合、誰も安倍首相を庇えません。世論の数字が今後の政局を決める大きなポイントです。
――政局のキーパーソンは誰ですか。
朝霞 二階幹事長です。それに加えて、すでに政界を引退したかつての“参議院のドン”青木幹雄氏との連携がカギですが、青木氏が事実上支配する竹下派に総裁候補は不在です。総裁選に色気がある茂木敏充経済再生担当相は閣内にいるので難しいでしょう。
そこで竹下派は少数派閥を抱える石破氏を推す流れになることが考えられます。一方、岸田派と麻生派は岸田氏を推しますが、清和会としては悩ましいところです。ですから、次の総裁選はいろいろな思惑が飛び交います。
――来年は統一地方選挙と参議院選挙が控えています。
朝霞 党総裁は顔ですから、選挙で戦うにはどの人がふさわしいか、それを誰しもが考えて行動をするでしょう。
霞が関の官僚による反乱?
――党実力者の話し合いでの総裁選出はありえますか。
朝霞 それはやりません。かつて、小渕恵三が首相在任中に死去した際、後継に森喜朗氏が就任しました。ただし、選任過程でいわゆる「5人組による密室政治」で決めたことについて世論から大バッシングを受け、それが現在でも自民党内のトラウマになっています。それは結果として来年の選挙に響くことになります。
――一連の発覚した不祥事は、霞が関の官僚による安倍内閣に対する反乱ではないか、という見方もあります。
朝霞 霞が関による反乱というわけではないです。絶対政権の安倍政権が強大化し、官僚の人事も首相官邸が主導するなかで、官僚全体が安倍政権に忖度するようになっていたところで、行政の膿も出てきたととらえています。
佐川氏が刑事訴追される可能性もありますが、今回、政治は佐川氏を切り捨てました。これを見た優秀な大学生が公務員を志望しなくなれば、国の行方が危ぶまれます。その点だけでも、安倍政権の罪は重いです。
(構成=長井雄一朗/ライター)