財務省の福田淳一事務次官のセクハラ疑惑をめぐって野党が追及の姿勢を見せ、財務省は外部の弁護士による調査を行い、記者クラブ加盟マスコミ各社の女性記者に情報提供を求めるという異例の対応を見せている。例年であれば7月が人事の季節であるが、前倒しで福田次官を更迭するべきという意見が与党内からもわき上がっている。
「これを単にセクハラ問題に矮小化すべきではないかもしれない」と解説するのが政治ジャーナリストの朝霞唯夫氏だ。首相官邸はこれを機に、内閣府人事局を使い、霞が関の人事を思い切って刷新し、各局長級までを思いのまま動かすことを狙っているという情報も聞こえていると朝霞氏は言う。そうなれば各省庁では安倍晋三首相の“お気に入り人事”が行われるだろう。
このセクハラ疑惑をめぐり、政治と行政の裏で何が起っているのか。
――福田事務次官の人柄と評判は?
朝霞唯夫氏(以下、朝霞) 悪くないです。極めて優秀で、佐川宣寿元国税庁長官や片山さつき参議院議員ら財務省同期のなかでも自他ともに認める優秀な人材で、事務次官には「なるべくにしてなった」といわれています。佐川氏は東京大学経済学部に入学する際に二浪した苦労人で努力型。一方の福田氏は天才型。豪放磊落の面もあり、仕事もでき、オンオフの区別もしっかりして周囲を盛り上げることもでき、頭の回転もよかった。それほど悪く言う人はいなかったです。
――先週、「週刊新潮」(新潮社)がその福田氏のセクハラ疑惑を報じました。
朝霞 一部では「新潮」にリークしたのは首相官邸だという声も聞こえてきました。それはなぜか。森友問題で安倍政権は揺らぎ、安倍晋三首相と麻生太郎財務相も「しっかり組織を立て直す」と言いましたが、加計学園問題や防衛省の日報問題も再燃して政権はガタガタ。内閣支持率も落ちている状態です。ここでV字回復は無理でも、内閣支持率回復を狙い「財務省の立て直しをする」との大義名分で、内閣府人事局を使って財務省主計局をはじめとする局長レベルも総とっかえの人事をやって、さらに邪魔な事務次官を更迭するという話がささやかれています。
では、なぜ財務省が「セクハラを受けた女性記者は名乗り出てください」「新潮社を訴える」と抵抗しているのか。これは財務省が単にマスコミや世論を敵にしたのではなく、首相官邸に売られた喧嘩を買ったわけで、官邸に反旗を翻したという見方です。これが事実であれば、恐ろしい話ですね。