偶然なのか、何者かが故意に行ったのか――。新型コロナウイルスワクチンをめぐる不可解な事案が世間をざわつかせている。ワクチンを保管する冷凍庫や冷蔵庫の電源プラグがコンセントから抜ける事例が相次いでいるのだという。6月20日には大阪府寝屋川市の広瀬慶輔市長が、次のように自身の公式Twitterアカウントでコメントを発表した。
「【市民のみなさんへ】
(ワクチンの廃棄について)
市内の集団接種会場(西北コミセン)で、何らかの事情でワクチン保管用の冷凍冷蔵庫のコンセントが抜ける事案が発生しました。これによりワクチンが溶解したことから、念のために85バイアル(510回分)を廃棄しました」
「機械警備で人の出入りは確認されておらず、現在、接種会場の運営委託を行っている事業者など関係者からも事情を聞くとともに、被害届の提出も含め、警察と相談していると報告を受けています。
現在はワクチンは安定供給されており、市の接種スケジュールへの影響はありません」
【市民のみなさんへ】
— 広瀬けいすけ 寝屋川市長 (@hirosekeisuke_) June 20, 2021
(ワクチンの廃棄について)
◼️市内の集団接種会場(西北コミセン)で、何らかの事情でワクチン保管用の冷凍冷蔵庫のコンセントが抜ける事案が発生しました。これによりワクチンが溶解したことから、念のために85バイアル(510回分)を廃棄しました。
続く
同市のワクチン接種会場は、市長の投稿にある西北コミュニティーセンターを含め市内4カ所で開設されている。コミュニティーセンターは平日・土曜日(祝日を除く)は午前9時~午後10時、日曜日・祝日は午前9時~午後5時まで開館している施設だ。同センターを含む4カ所の接種会場の開設時間は月~土曜日は午後2~5時、日曜日は午前10時~午後5時となっている。
同市新型コロナウイルス感染症対策室の担当者は次のように語る。
「18日午後5時半に接種会場である西北コミュセンの体育館を施錠しました。この前に会場責任者が電源が入っていることを確認しています。プラグが抜けているのが発見されたのが19日正午ごろです。接種会場の体育館はコミュセン本棟とは別に建っていて、センター側の建物を通って入館する導線ではありません。外部と直結した入り口があるタイプのものです。大阪府警に相談しましたが、夜間に何者かが侵入した形跡を確認できず、事件性は低いということになりました」
報道では“テープで固定したプラグ”が抜けた事例も
寝屋川市のような事例は兵庫や千葉、神奈川など各県で発生しているという。時事通信は28日、記事『全国で相次ぐプラグ抜け ワクチン冷蔵庫、廃棄原因に―ネットで呼び掛けも』を公開し、5月下旬ごろから同様の事例が発生し「計約2100回分のワクチンが廃棄を余儀なくされた」と報じた。前述の寝屋川市のプラグ抜け案件に触れた上で、以下のように兵庫県芦屋市の事例も紹介している。一部引用する。
「25日朝、プラグ抜けが見つかった。24日夕、職員が冷蔵庫を設置した部屋に施錠。帰宅時に異常はなかった。プラグは外れないようにテープで固定されていたといい、同市は『(職員らが)誤って抜いたとは確認されていない。原因は分からない』と説明している」
また同記事では「コロナは風邪」などという主張を繰り返している国民主権党の平塚正幸氏のことにも触れ、「ツイッター上では5月下旬ごろから『プラグを抜こう』というハッシュタグ(検索用の目印)付きの投稿が広がる。今月16日には、ワクチンの危険性を訴える政治団体の党首を名乗るアカウントが、大田市の事例を報じたニュースを引用。『ありがとう。#プラグを抜こう』とツイートした」と一連の“事故”とSNS上での一部ユーザーの主張の関連をほのめかした。
冷凍庫は厚労省が一括配布しているモデル
市原市で同様の“プラグ抜け”事故が発生した千葉県の関係者は次のように話す。
「コロナワクチンの保管用冷凍庫は厚生労働省が各自治体に一括配布しています。つまり同一のモデルなので、プラグ自体に不具合があれば、全国で同様の事例が発生する可能性もあるのかもしれません……。ただ時事通信さん記事中にプラグの写真もでていたと思いますが、そんなに簡単に抜けるようなものではないように見えます。不気味です」
警察庁関係者は「闇雲に事件性を煽る取材や報道は感心しない」と釘を刺しながらも、次のように話した。
「そもそも全国で膨大な数の接種会場が設営されているので、似たような事故が起こる可能性は否定できないでしょう。加えて、どこの接種会場も仮設かつ急造仕様なので、会場各所に設置された電気機器と電源を結ぶ電気コードが、床の上を縦横無尽に這っている状況です。コードに足を引っかける、もしくは他の機器が倒れたり、机から落ちたりしてコードを引っ張り、たこ足配線になっている電源タップなどを巻き込んで、冷凍庫のプラグが抜けるという事態もあり得るのではないでしょうか。
あくまで仮定の話ですが、特定の主義主張の何者かが意図して各地のプラグを抜いているのだとしたら、それはそれで危険な兆候だとは思いますね。接種会場の多くは不特定多数が深夜まで出入り可能な地方自治体の公共施設なので、不審者が会場周辺に出入りすることを完全に防止するのは難しい。
カードキーなど最新鋭の設備のない、老朽化した自治体の体育館や会議室の鍵などは、たいがい施設利用者に貸し出す仕組みなので、その間に合鍵を作られてしまう可能性もあるでしょう。監視カメラが敷地境界にしかない施設も多いですしね。
なんらかの主義主張を実現しようとする過激な行動は、今も昔も少しずつエスカレートしていくものです。『プラグを抜くこと』に成功したのなら、次は『ワクチン本体』を狙うかもしれない。何者かが接種会場に忍び込み、プラグを抜くことができるのなら、冷凍庫自体や、保管されているワクチン本体に“なにかする”ことができるということ。万に一つ、過激な行動が実際に行われたのなら警察も毅然とした対応を取ると思いますよ」
真相はどこにあるのか――。
(文=編集部)