ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 六代目山口組・ガレージ当番の現実
NEW

六代目山口組総本部のガレージ当番をさせたとして、直参組長が逮捕……どんな罪に当たるのか?

文=沖田臥竜/作家
【この記事のキーワード】, ,
六代目山口組総本部のガレージ当番をさせたとして、直参組長が逮捕……どんな罪に当たるのか?の画像1六代目山口組総本部に入るために必要なIDカード

 神戸市篠原にある六代目山口組総本部には、直参組織の持ち回りで行われている「ガレージ当番」という当番制度がある。

 ガレージ当番とは、総本部に出入りする車両の出し入れの確認や、車両を誘導する役割などを担っており、365日24時間体制で行われて、同時に総本部周辺の巡回なども行っている。六代目山口組分裂直後には、万が一の事態に備えて、当番にあたる組員らに防弾チョッキの着用が義務づけられたこともあった。

 そうしたガレージ当番に、組員ではない一般人を派遣させていたとして6月25日、石川県に本部を置く二代目昭成会・田保伸一会長が、職業安定法違反容疑で石川県警に逮捕された。一般人に公衆道徳上問題のある業務に就かせる目的で職業紹介をした罪に当てはまると思われる。

 近年、事務所当番に組員ではない一般人を入れていたとして、強要などの罪名で組幹部らが逮捕されるケースが起きている。また、去年10月にも、六代目山口組系二次団体幹部らが「これから当番に連れて行くから行儀よくしろ」と一般人を脅したとして、逮捕されている。

 だが今回の田保会長の逮捕は、こうしたケースとは少し異なるとの見方があるようだ。ある幹部はこう話す。

「昔から、『当番に入っとけ』と半ば強引に事務所に連れて行き、当番を任せることはどこの組織にでもあった。それを強要といわれれば、確かに時代が時代だから、そうとられてしまうかもしれない。だが、それにしても、カタギの人間を連れていくことはない。あくまで、今でいう“関係者”だ。そうでなければ、ヤクザと関わりができるわけがないし、事務所当番に連れていくなんてことにはならない」

 そうした状況を踏まえた上で、今回の田保会長の逮捕についても、事情を知らない一般人をガレージ当番に入れたとする解釈には無理があるのではないかと語る。

「六代目体制が発足してからは、総本部に登録しIDカードを発行された者でなければ、総本部に出入りすることができなくなった。登録するには、本人の名前、所属するブロックや組織名称はもちろん、証明写真も必要で、それを提出しないとIDカードは発行されない。証明写真はそのままIDカードに貼られてあり、その写真と照らし合わせて初めて総本部に出入りすることが許される。ガレージ当番にあたる人物に対しても、IDカードの携帯が義務付けられており、今回のケースでも、IDカードを発行してもらうために、証明写真を自ら撮りに行き、総本部に提出している時点で、『一般人が当番に行った』という理屈は通らないのではないか」(同幹部)

当番を集めることすら苦労する時代に

 IDカードの規定においては、六代目山口組分裂以前に一度厳しく見直されたことがあった。

 その理由は、当時、若中の直系組長の持ち回りで行われていた名古屋市にある六代目山口組・司忍組長宅の本家当番について、一般人が当番を強要させられたとして、六代目山口組直系組長(当時)が逮捕され、六代目山口組発足後初となる家宅捜索が司組長宅に入ったからだ。

 その逮捕についても著者は、多少の強引さがあったのではないかと当時感じていた記憶がある。なぜならば、“被害者”となった人物は、本家当番だけでなく日頃から、逮捕された組長の運転手を務めていたのを筆者もたびたび目にしていたからだ。

 ある公用でその組織の幹部と話した際には、間違いなくその人物は三次団体で副会長を務めていたと聞いていたし、その後その人物には絶縁状が関係者各位に撒かれたことを覚えている。そういう意味では一般人ではないし、そんな人物が強要されて、本家当番にあたることがあるだろうか。

 しかし、司組長宅に家宅捜索が入ったことを重くみた当時の六代目山口組執行部の親分衆らはその後、総本部に出入りする組員に対して、いくら所属する組長の付き人や運転手であったとしても、ヤクザ歴5年を過ぎてなくてはならないという通達を出し、本家当番の付き人についても、二次団体の執行部クラスでなければ出入りすることを禁じるようになったのだ。

 そうした一方で、最近は関係者らからこういった声が上がっているのも確かだ。

「ガレージ当番といえば、以前は12~13人で行われていたが、組員の負担などを考えて現在は7名と決まっている。引率者で責任者である執行部1名(二次団体最高幹部)、二次団体の直参組員3人、枝の組員(三次団体組員)が3名の7人体制となっている。しかし、その7人ですら集めるのが困難な組織があると聞く」(前出の幹部)

 それについて、ヤクザ事情に詳しいジャーナリストは、こう解説している。

「身体を取られる事務所当番は嫌なものだと、みなさん口にします。特に若い組員にはその傾向が強いようです。そのため、組関係者に小遣いを与えて、短期的に当番に入ってもらうこともあるようです。今回も、組長側からしてみれば、関係者にちょっとお小遣いを与えて手伝ってもらったくらいのつもりだったかもしれませんが、その小遣いを給与と拡大解釈し、ガレージ当番は給与が発生する業務(職業)として捜査当局は捉えたのでしょう」

 そのため、田保会長の逮捕容疑が職業安定法違反に当たるのではないかというのだ。

「今後も、こういった事案は増加する可能性はあると思います。本人が、『脅されて、無理やり事務所当番に駆り出された』と警察に駆け込めば、強要だけでなく監禁なんてことにもなりかねません。そして今回のように突き上げ捜査で、トップまで逮捕できる可能性が出てきています」 (同)

 ヤクザにとって、事務所当番とは当たり前の“ヤクザごと”だった。それも総本部のガレージ当番ともなれば、選ばれて総本部に出入りできるだけでも誉れとする時代があった。刑務所などでは「本家へと行ったことがある」と、当番をしたことを自慢気に話す懲役囚だっていたほどだ。だが時代が変わり、今はそうしたこととは大きくかけ離れてしまっているのではないだろうか。当局による、ヤクザ組織の締め付けを目的とした法運用の厳格化により、ヤクザ社会が大きく変貌しつつある。
(文=沖田臥竜/作家)

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

六代目山口組総本部のガレージ当番をさせたとして、直参組長が逮捕……どんな罪に当たるのか?のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!