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「風水」に基づく仕掛けが原因?中国、全土の超高層ビルで倒壊リスクに警戒 政府が建設禁止命令

取材・文=相馬勝/ジャーナリスト
「風水」に基づく仕掛けが原因?中国、全土の超高層ビルで倒壊リスクに警戒 政府が建設禁止命令の画像1
中国・深圳市の「賽格広場(SEGプラザ)」(「gettyimages」より)

 今年5月に中国南部の深圳市中心部にある「賽格広場SEGプラザ)」の高さ356ⅿ、地上72階・地下4階建ての高層ビル「賽格大廈」が2日間にわたって揺れ続け、パニックになったビル内のオフィスにいた約1万5000人が避難した騒動から2カ月以上が経ったが、ビル全体の異常な揺れの原因がようやく判明した。

 ビル最上階の屋上部分に建てられた避雷針兼航空障害灯の役割を果たす2本の角を備えたような尖塔部分(マスト)が上空の風に揺られ、その振動がビル本体部分に伝わって共鳴し、ビル全体が共振する現象が起きていたというのだ。

 しかし、SEGプラザ全体が振動するような現象はこれまで起きたことがなく、今回が初めてだったのはなぜか。それは、このビルが完成してから現在で20年以上たっており、この間、ビル本体に疲労が蓄積して損傷が生じ、20年の年月をかけて、尖塔部分の振動の波長とビル本体が揺れる振動波長が一致したことによって、両者が共鳴したためだ。

 振動が起きないようにするには、尖塔部分を撤去して、ビル本体の損傷を修復しなければならないが、すでに7月20日から工事は始まっており、約1カ月間で終了するという。その後、ビルのテナントは順次、戻ってくる予定だ。

 SEGプラザの大きな揺れは5月18日から20日にかけて、数度にわたって発生した。地上72階・地下4階のビルには、数百の企業のテナントやマンション部分の居住者、レストランや商店などが入っており、これらの1万5000人以上が避難。駐広州アメリカ総領事館も深圳や広州などに居住する米国人に対して、ビルの近くに近寄らないように注意を喚起していた。

 事態を重く見た北京の習近平指導部もこのような異常事態発生後すぐに広東省トップの李希・中国共産党広東省委員会書記に事態の原因究明と安全確認を命じた。習氏としては、中国との関係が悪化しているアメリカから、これみよがしに中国の悪口を言われているようで、中国共産党のメンツにかけても事態を早く収集しろとの厳命ともいえるものだった。

 李氏も今後の自身の出世がかかっているだけに、専門家を中心とする特別調査チームを発足させて、陣頭指揮で対応に当たったが、なかなか原因が究明できずにいたので、ようやく原因がわかって、ほっと一息ついたというところだろう。

500ⅿ以上のビルの建設を禁止

 しかし、写真を見てもらえばわかるが、SEGプラザの屋上に立っている尖塔は避雷針兼航空障害灯としては、極めて大きくて、しかも2本も必要ないように感じないだろうか。実際、中国や香港には高層ビルの最上階付近にビルの間に吹き抜けのような大きな穴が開いているような形になっていたり、最上階に牛の角のような大きな尖塔が建っていたりするようなビルを見ることができる。例えば、香港の中国銀行タワーや香港上海銀行本店ビルである。

 これは、中華圏の風水の名残で、風水とは古代中国の思想で、都市、住居、建物、墓などの位置の吉凶禍福を決定するために用いられてきた、「気の流れを物の位置で制御する」という思想である。

 中国政府は7月、500ⅿ以上のビルの建設を禁止し、100ⅿ以上のビルの建設を制限するという通達を全国の自治体に発出したが、中国の高層ビルにはSEGプラザ同様、風水に基づいて、高層階部分になんらかの「仕掛け」をしているビルも多いだけに、中国当局は今後、SEGプラザ同様の現象が起きないかどうか、中国全土の高層ビルをしらみつぶしに検査することも考えられる。
(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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